住宅ローンの金利は上昇局面が続いています。全期間固定のフラット35は、2026年9月の借入金利(21年以上35年以下・融資率9割以下・新機構団信付きの最頻金利)が年3.460%となり、8月の年3.290%からさらに上がって、現行制度になった2017年10月以降でもっとも高い水準を更新しました(住宅金融支援機構の金利情報で確認)。このような局面であらためて価値が高まるのが「フラット35のアシューマブルローン」です。
アシューマブルローン(金利引継特約付き【フラット35】)という仕組みは2017年10月に始まりました。あまり聞き慣れない用語かもしれません。
この記事では、アシューマブルローンの仕組み・メリット・デメリットを、住宅金融支援機構の公式情報にもとづいてわかりやすく解説します。将来、マイホームの売却を考えている人は必見の仕組みです。
フラット35のアシューマブルローンとは?
アシューマブルローンとは、別称「債務承継型ローン」です。
「フラット35のアシューマブルローン(金利引継特約付き【フラット35】)」は、対象となる住宅を売却するときに、購入者へ債務(返済中のフラット35)を引き継ぐことができる、「金利引継特約付き」の住宅ローンです。なお、この仕組みは2017年10月に始まり、2018年4月に名称が「金利引継特約付き【フラット35】」へ変更されています。
借入の対象となる住宅は、①長期優良住宅の認定を受けた住宅 ②予備認定マンション ③管理計画認定マンションのいずれかです(住宅金融支援機構の公式ページ「ご利用条件」で確認。同ページの公開日は2025年10月1日)。かつては長期優良住宅だけが対象と説明されることが多かったのですが、現在はマンションの認定制度も対象に含まれています。金利引下げメニューなど、その他の利用条件は通常のフラット35と同じです。
アシューマブルローン利用の物件が売却される際、売却価格が債務より低額の場合、差額は売主が弁済します。逆に、売却価格が債務残高より高く設定される場合、承継者は売主の住宅ローンを引き継ぐこともできますし、不足分について新たにフラット35を借り入れることも可能です。
アシューマブルローン(金利引継特約付き【フラット35】)の取扱金融機関は限られています。全国で数百の金融機関がフラット35を扱う一方、機構も「フラット35の申込みができる金融機関のうち、金利引継特約付き【フラット35】の取扱いを行っていない金融機関がある」と明記しており、まだ広く浸透しているとはいえません。最新の取扱状況や取扱金融機関については、【フラット35】公式サイトの取扱金融機関・借入金利のページでご確認ください。
もうひとつ見落としやすいのが借入金利です。機構は金利引継特約付き【フラット35】について「借入金利は、取扱金融機関にお問合せください」と案内しています。つまりこの特約を付けた場合の金利が、通常のフラット35とまったく同じとは限りません。申込先の金融機関に、特約なしの場合との金利差があるかどうかを必ず確認しましょう。
なお、債務を承継可能といっても、将来の住宅購入者の同意と住宅金融支援機構の審査があるので、審査に通過してもらえなければ利用できません。また、アシューマブルローンは借り換えには利用できず、新規に住宅を取得する資金として利用する仕組みです。
引継不可となった場合は、アシューマブルローン利用者である売主がフラット35の残債を弁済して売却しなければなりません。
<アシューマブルローンの仕組み>

仕組みの要点を1枚で整理
| 確認する項目 | 内容 | 備考 |
|---|---|---|
| 対象となる住宅 | 長期優良住宅の認定を受けた住宅/予備認定マンション/管理計画認定マンション | その他の利用条件は通常のフラット35と同じ |
| 引き継げるもの | 返済中のフラット35の金利と債務(残りの返済期間) | 金額ではなく「残りの期間」を引き継ぐ |
| 承継の条件 | 住宅購入者の同意+住宅金融支援機構の審査 | 審査結果によっては引き継げない |
| 承継できる金融機関 | 売主が借りていた金融機関に限られる | 他の取扱金融機関では承継できない |
| 借入金利 | 取扱金融機関に問い合わせて確認する | 特約なしのフラット35と同じとは限らない |
| 借り換えでの利用 | できない | 新規の住宅取得資金としてのみ利用可 |
| 承継時にかかる費用 | 抵当権変更登記費用など | お客さま(承継する側)の負担 |
※住宅金融支援機構【フラット35】公式サイト(ご利用条件・取扱金融機関・借入金利のページ、よくある質問)を2026年9月に確認。制度内容は変更されることがあるため、最新の条件は公式サイト・取扱金融機関でご確認ください。
フラット35のアシューマブルローンのメリット
それでは、金利引継特約付きのフラット35、アシューマブルローンを利用するメリットは何なのでしょうか?
日本銀行は2024年3月にマイナス金利政策を解除し、その後も段階的な利上げを続けて2026年6月16日の金融政策決定会合で政策金利を年1.0%程度まで引き上げました。フラット35の金利も、2026年9月には現行制度で最高の水準に達しています。だからこそ、過去の低金利の時期に借りたフラット35を、将来の購入者へ引き継げるアシューマブルローンの価値は、むしろ高まりつつあります。日本の金利がさらに上昇していけば、低い金利の住宅ローンを引き継げることは、購入者にとって大変魅力的でしょう。つまり、自分の家を売る時に「低金利」という付加価値をつけられるのが大きなメリットです。
実際、フラット35の借入金利はこの数か月でも小刻みに動いています。下の図は、住宅金融支援機構が公表している最頻金利(21年以上35年以下・融資率9割以下・新機構団信付き)の推移です。わずか3か月で0.320%も上がっていることがわかります。

もちろん、将来的に購入した住宅を売却する意志がないのであれば、アシューマブルローンを利用する意味は小さいでしょう。しかし、購入後に予想もしなかった理由で住み替えしなければならない事例も多く、購入したその住宅が終の棲家であると言い切れる方は少ないのではないかと思います。となると、将来より有利に売却できる可能性を残しておくためにも、アシューマブルローンを利用するという選択肢もありですね。
フラット35のアシューマブルローンのデメリット
ではアシューマブルローンについてのデメリットはないのでしょうか。ここで挙げる4点は、いずれも債務を引き継ぐ「承継者側」のデメリットです。
まず1つめに、承継者は返済期間の残期間を引き継ぐこととなります。”金額”ではなく”期間”を引き継ぐことがポイントです。
そのため返済期間の延長は不可、短縮についても承継者が繰上返済などの手続きを取る必要があります。
期間延長ができないといっても、住宅ローンを返済している方の多くが繰上返済などを行い、本来の借り入れ期間よりも短縮して完済しているといった調査結果もあります。あまり気にしなくても良いでしょう。
そして2つめが、承継者が加入できる団体信用生命保険は、売主と同じ保障内容のものに限定される点です。つまり、売主が団信に未加入の場合、承継者は加入することができません(住宅金融支援機構のよくある質問で説明されています)。団信に加入している場合には問題ありませんが、未加入の場合にはデメリットになり得ますね。
それから3つめが、承継者は売主の住宅ローン控除を引き継ぐことはできません。ただし機構の説明によれば、債務承継とあわせて、購入価額の不足分について新たにフラット35を借り入れる場合、その借入部分は要件を満たせば住宅ローン控除の対象になります。つまり「控除がまったく使えない」のではなく、引き継いだ債務の部分だけが控除の対象外という整理です。
アシューマブルローン利用の住宅を購入したい時は、新たに住宅ローンを組んで受けられる住宅ローン控除(控除率0.7%)と、「アシューマブルローン」で引き継げる金利を比較検討する必要があります。住宅ローン控除は2030年12月31日までに入居した場合まで適用が延長されており(控除率0.7%は維持)、当面は比較材料として有効です。金利差が小さければ控除のメリットが上回ることもありますが、市場金利と引き継げる金利の差が大きいほど、このデメリットは相対的に小さくなります。
4つめが、承継の手続きに関する制約です。債務を引き継げる金融機関は、売主が借りていた金融機関に限られます。「取扱金融機関ならどこでもよい」わけではなく、承継者にとっては金融機関を選べないということでもあります。また、抵当権の変更登記費用などの実費がかかり、これは承継する側の負担です。
考えられるデメリットを挙げてみましたが、それほど致命的なものにはならないレベルです。しかもこれはすべてローン内容を引き継ぐ承継者側のものです。アシューマブルローンを利用し、これを引き継がせる側には大きなデメリットはありませんね。
よくある質問(FAQ)
アシューマブルローンは借り換えにも使えますか?
いいえ。金利引継特約付き【フラット35】は借り換えには利用できません。新規に住宅を取得する際の資金として利用する仕組みです。
どの金融機関でも利用できますか?
いいえ。取扱金融機関は限られています。フラット35を扱っていても、金利引継特約付き【フラット35】は取り扱っていない金融機関があります。利用したい金融機関が対応しているかは、フラット35公式サイトの取扱金融機関一覧や各金融機関でご確認ください。
金利引継特約を付けると、借入金利は通常のフラット35と同じですか?
同じとは限りません。住宅金融支援機構は、金利引継特約付き【フラット35】の借入金利について「取扱金融機関にお問合せください」と案内しており、金利は金融機関ごとに設定されます。特約なしのフラット35と比べて差があるかどうかは、申込先の金融機関に直接確認してください。
債務を引き継ぐときも、金融機関は自由に選べますか?
いいえ。債務承継で利用できるのは、売却する方が金利引継特約付き【フラット35】を利用していた金融機関に限られます(住宅金融支援機構のよくある質問で説明されています)。承継する側は金融機関を選べない点に注意してください。
対象になる住宅に条件はありますか?
あります。金利引継特約付き【フラット35】の対象は、長期優良住宅の認定を受けた住宅・予備認定マンション・管理計画認定マンションのいずれかです。それ以外の利用条件は通常のフラット35と同じです。詳細は住宅金融支援機構(フラット35公式)でご確認ください。
売る側にとって、この特約を付けるデメリットはありますか?
制度上の大きな不利益は見当たりませんが、対象住宅が長期優良住宅・予備認定マンション・管理計画認定マンションに限られるため、そもそも取得する住宅がこれらに該当している必要があります。また、取扱金融機関が限られるぶん、金利や諸費用の条件で申込先の選択肢が狭まる可能性はあります。金利上昇局面で売却時の付加価値になる一方、借入時点では「金融機関と住宅の選択肢が狭まる」というコストがあると理解しておきましょう。
債務を引き継いだ場合、住宅ローン控除は使えますか?
引き継いだ債務については住宅ローン控除を受けられません。ただし、債務承継とあわせて購入価額の不足分を新たにフラット35で借り入れる場合、その借入分は要件を満たせば控除の対象になります。適用の可否は最寄りの税務署にご確認ください。
承継するときに費用はかかりますか?
かかります。抵当権変更登記費用などが必要で、これは債務を引き継ぐ側の負担になります。金利面のメリットと、こうした実費・諸費用を合わせて判断しましょう。
アシューマブルローンは未来の可能性
アシューマブルローンは将来の金利上昇に備える金融商品です。
日銀は2024年3月にマイナス金利政策を解除し、その後は段階的な利上げを進める正常化局面に入りました。長く続いた大規模な金融緩和はすでに終了し、金利のある世界へと移行しています。直近では2026年6月16日の金融政策決定会合で政策金利を年1.0%程度へ引き上げ、7月31日の会合では金融市場調節方針を変更していません(日本銀行の公表資料で確認)。次回の金融政策決定会合は2026年9月17日・18日に予定されていますが、その結果はまだ決まっていませんので、「いつ何%上がる」と決め打ちして判断しないよう注意してください。
今後、物価や景気の動向次第ではさらに金利が上昇していく可能性もあります。そうなると、過去の低い金利で組んだ住宅ローンを引き継げることの価値は、一段と際立ってきます。
金利が高いタイミングで、過去の低水準の金利を引き継げるとなれば、売却する住宅の大きなメリットとなるのはいうまでもありません。逆に言えば、この仕組みが力を発揮するのは「借りたときより市場金利が上がっている」局面に限られる点も、あわせて理解しておきたいところです。
なお、承継せずに自分で新たな住宅ローンを組む場合は、フラット35だけでなく、保証料0円・一部繰上返済手数料0円・一般団信の上乗せなしなど諸費用がわかりやすいSBI新生銀行のような民間ローンも含めて、総返済額で比較するとよいでしょう。
住宅の購入時に将来的に売却する意思がなくても、未来に多くの選択肢を残しておけるのがアシューマブルローンです。最新の取り扱い状況は必ず各金融機関・フラット35公式サイトでご確認ください。










