日本の住宅ローンは長く低金利が続いてきましたが、2026年に入り金利は上昇局面へと移りつつあります。一方で、これまで値上がりを続けてきた住宅価格も一部で頭打ちの兆しが見え、住まい選びは1つの節目を迎えています。
それでも、いまの住宅価格は10年前・20年前と比べるとかなり高い水準です。ここまでマイホームの販売価格が高いと、1人の収入だけでは、立地や広さの面で希望どおりの物件を購入しにくいのが実情です。
そんなときに活用できるのが、連帯債務・収入合算の仕組みやペアローンです。いずれも2人の収入を使って住宅ローンを組む方法で、1人で借りるよりも借入可能額を増やせます。
たとえば、共働きの公務員や正社員の夫婦はもちろん、正社員でなくても一定の安定した収入があれば、それらを合算して借入可能額を増やせるケースがあります。
この記事では、混同されやすい「ペアローン」「連帯債務」「収入合算(連帯保証)」の違いを、基礎から順に整理していきます。
目次
ペアローンと連帯債務・収入合算とは?
ペアローンとは、一定の収入がある夫婦や親族が、1つの物件に対してそれぞれ別々の住宅ローンを契約する方法です。合計2本のローンを組む形になります。これに対し、2人の収入を合わせて1本の住宅ローンとして借りるのが「収入合算」で、その合算の仕方によって連帯債務型と連帯保証型に分かれます。
いずれも目的は「借入可能額を増やすこと」で共通していますが、契約の本数・責任の負い方・団信(団体信用生命保険)の扱い・住宅ローン控除の使い方が異なります。まずはそれぞれのメリット・デメリットを確認していきましょう。
なお、収入合算の相手として認められる範囲は配偶者や親子など親族に限定されるのが一般的ですが、近年は同性パートナーを対象に含める金融機関も増えています。利用条件は金融機関ごとに異なるため、申し込み前に必ず確認しておくことをおすすめします。
3つの方式の違いをひと目で比較
ペアローン・連帯債務・連帯保証(収入合算)の主な違いを表にまとめました。ご自身の家計や働き方に照らして、どの方式が向いているかを考える出発点にしてください。
| 比較の観点 | ペアローン | 連帯債務(収入合算) | 連帯保証(収入合算) |
|---|---|---|---|
| ローンの本数 | 2本(各自が契約) | 1本 | 1本 |
| 返済の責任 | 各自が自分の債務を負う | 2人とも全額の返済義務を負う | 主債務者が負い、合算者は保証人 |
| 団信の対象 | 2人とも加入できる | 原則は主債務者のみ(フラット35はデュエットで2人可) | 主債務者のみ |
| 住宅ローン控除 | 2人とも利用できる | 2人とも利用できる | 主債務者のみ |
| 諸費用 | 2本分でやや割高 | 1本分で抑えられる | 1本分で抑えられる |
| 取扱い金融機関 | 多い | 比較的少ない | 多い |
ペアローンのメリット・デメリット
- メリット
- 2人分の収入で審査されるため、借入額を増やしやすい
- 住宅ローン控除を2人それぞれが利用できる
- 2人とも団信に加入できるため、どちらに万一があってもその人の債務は完済される
- デメリット
- 契約が2本になるため、事務手数料・司法書士報酬・印紙税などの諸費用が2本分かかる
- 2人とも団信の審査(健康状態)を通る必要がある
ペアローンは、2人がそれぞれ別々に住宅ローンを契約します。したがって、出産・育児休業のあとも仕事に復帰し、双方が返済を続けられることが前提になります。また、いずれかの健康状態や持病の状況によっては団信の審査に通らず、ペアローンを利用できないこともあります。
こうした細かな制約はありますが、ペアローンの最大のデメリットは、2本分の諸費用がかかることです。一方で、片方に万一のことがあっても、その人のローンは団信で完済される点は大きな安心材料になります。ただし残された側のローンはそのまま残るため、その分の備え(収入保障保険など)も合わせて検討しておくと安心です。
連帯債務・連帯保証(収入合算)のメリット・デメリット
- メリット
- 2人の収入を合算するため借入額を増やしやすい
- 契約する住宅ローンは1本なので、諸費用や手続きの手間は1人分で済む
- デメリット
- 連帯債務型を取り扱う金融機関は比較的少ない
- 団信の対象は原則として主債務者のみ(合算者は対象外になりやすい)
- 連帯保証型では住宅ローン控除は主債務者しか使えない
諸費用をあまり増やさずに借入額を増やせるのが、収入合算(連帯債務・連帯保証)の大きなメリットです。一方で、連帯債務を取り扱う金融機関は限られる点、そして団信は主債務者にしか適用されないのが原則である点には注意が必要です。合算者に万一のことがあっても団信では返済されないため、あらかじめ生命保険や収入保障保険で備えておく考え方が大切です。
なお、フラット35には連帯債務者もセットで団信に加入できる「デュエット(夫婦連生団信)」という仕組みがあり、この課題を解消できます(詳しくは後述します)。
住宅ローン控除との関係
住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)は、住宅ローンを借りてマイホームを取得した場合に、金利負担を軽減するための制度です。年末時点の住宅ローン残高に控除率0.7%を掛けた額が、所得税(引ききれない分は一部が住民税)から控除されます。新築住宅などでは控除期間は最長13年間です(2026年以降入居分。制度は延長されています)。
ここで方式による違いが出ます。ペアローンと連帯債務では、2人それぞれが住宅ローン控除の対象になります。一方、連帯保証型の収入合算では、控除を使えるのは主債務者のみです。共働きで2人とも所得税・住民税を納めている家庭では、控除を2人で使えるかどうかが節税額に直結します。
ただし、控除率・借入限度額・床面積要件などは税制改正でたびたび見直されます。実際に適用される条件は、国税庁や国土交通省の最新情報でご確認ください。
夫婦で団信に加入できるフラット35「デュエット(夫婦連生団信)」
連帯債務のデメリットである「連帯債務者には団信が適用されない」という点を解決できるのが、フラット35の「デュエット(夫婦連生団信/ペア連生団信)」です。連帯債務で借りる夫婦が2人そろって加入でき、どちらか一方が死亡または所定の身体障害状態になった場合に、住宅の持分や返済割合にかかわらずフラット35の残高全額が保険金で返済されます。
2017年10月以降のフラット35(新機構団信)では、団信は「特約料を別途支払う」方式ではなく、借入金利に上乗せする方式に変わっています。デュエットの場合は新機構団信付きフラット35の借入金利に年0.18%を上乗せする形で加入します(2026年時点。最新の上乗せ幅は住宅金融支援機構の公式サイトでご確認ください)。加入できる相手には、戸籍上の夫婦のほか、婚約関係・内縁関係の方、同性パートナーの方も含まれます。
夫婦の収入をそれぞれの柱として家計を支えている場合、片方だけの保障では不安が残ります。連帯債務でフラット35を検討するなら、デュエットの活用も合わせて考えると、万一のときの備えを厚くできます。
よくある質問(ペアローン・連帯債務・収入合算)
Q. ペアローンと収入合算はどちらを選ぶべき?
判断の軸は「団信」と「住宅ローン控除」です。夫婦2本柱で家計を支えていて、どちらに万一があっても困る場合は、2人とも団信に入れ、控除も2人で使えるペアローンが向きます。一方、諸費用を抑えたい・主に世帯主が家計を支えているといった場合は、1本で済む収入合算が選択肢になります。
Q. 連帯債務でも夫婦2人が団信に入れますか?
民間銀行の連帯債務では、原則として団信の対象は主債務者のみです。ただしフラット35なら、前述の「デュエット(夫婦連生団信)」を使うことで連帯債務の夫婦2人が加入できます。銀行の商品でも一部で連生団信を扱うケースがあるため、各金融機関の最新の取り扱いをご確認ください。
Q. どちらか一方が仕事を辞める予定でも組めますか?
ペアローンも収入合算も、2人の収入が続くことを前提に借入額を計算します。将来どちらかが専業主婦(主夫)になる予定があるなら、返済が一方に集中しても無理のない範囲にとどめるか、単独ローンを選ぶほうが安全です。「いくら借りられるか」ではなく「無理なく返せるか」で判断しましょう。
ペアローン・連帯債務のまとめ
ペアローン・連帯債務・収入合算は、いずれも1人では希望物件の審査が通らないときに、2人の収入で借入可能額を増やすための方法です。どうしても購入したい物件があるときの有力な手段になりますが、団信・住宅ローン控除・諸費用・責任の負い方に違いがあるため、家計や働き方に合わせて選ぶことが大切です。
ペアローンと連帯債務ではどちらも住宅ローン控除を2人で活用できるため、共働きのご夫婦は節税の観点でも検討する価値があります。あえて節税目的でペアローンを選ぶケースもあります。ただし、金利が上昇局面にある局面では返済負担も増えやすいため、借りすぎには注意しましょう。
金融機関を選ぶ際は、金利だけでなく団信の保障内容・事務手数料・繰上返済のしやすさもあわせて比較すると、総返済額を抑えやすくなります。たとえばSBI新生銀行は保証料が原則0円で、上乗せ金利のない全疾病保障付団信を用意するなど、諸費用と保障のバランスがわかりやすい銀行のひとつです。フラット35で夫婦2人の保障を厚くしたい場合はデュエットも含め、複数の選択肢を比べたうえで、ご自身に合ったプランを見つけてください。










