納税は日本国民の義務の1つです。誰であっても税金の未納や滞納は認められません。
しかし、自営業や個人事業主の場合、資金繰りの問題などで定められた納税期限までに納税できない事態になることがあります。
また、転職時の手続きの都合などで住民税を一括納付しなければならず、納税額が想像以上に高額になって、やむを得ず滞納してしまうケースも少なくありません。
この記事では、税金の滞納や未納が住宅ローン審査にどのような影響を与えるのかを、納税証明書の仕組みから対処法まで順に解説していきます。
目次
税金の滞納や未納があると住宅ローン審査に通らない
公務員やサラリーマンであれば所得税・住民税は源泉徴収されますので、普通に生活していれば税金の滞納や未納はほとんどありません。滞納するケースが多いのは個人事業主や自営業を営んでいる人、もしくは過去に自営業を営んでいた経験がある人です。
自営業・個人事業主が住宅ローンの審査を申し込む場合、提出書類に「納税証明書」が含まれるのが一般的です。会社員のように源泉徴収票で所得と納税状況をまとめて確認できないため、所得の裏づけと納税の状況を別の書類で確認する必要があるからです。
この納税証明書には、未納の金額や延滞税などが記載されます。滞納している税金の記載がある状態の証明書を金融機関に提出しても、住宅ローンの審査に通ることはまずありません。
このように、税金の滞納は住宅ローンの審査に大きな影響を与えると考えておくべきです。
滞納の状態別に見た審査への影響
ひと口に「税金の滞納」といっても、状況によって審査への影響はかなり異なります。整理すると次のようになります。
| 申込時点の状態 | 審査への影響 | とるべき対応 |
|---|---|---|
| 未納なし(完納) | 問題にならない | 納税証明書を取得して提出する |
| 過去に滞納があり、現在は完納 | 直接の影響は小さい | 納付が証明書に反映されてから取得する |
| 現在も未納がある | 通過は極めて困難 | 申込前に完納する。難しければ税務署・市区町村に相談する |
| 猶予制度などで分割納付中 | 金融機関の判断による | 猶予の許可通知など、公的機関と合意して納付している事実を示せる書類を用意する |
| 差し押さえを受けている | 通過は見込めない | まず滞納処分の解除を優先する |
ポイントは、審査で見られるのは「過去に滞納したことがあるか」ではなく「今、未納が残っているか」だという点です。過去のつまずきそのものより、現在の状態を整えられているかが問われます。
CICなどの信用情報機関には税金の滞納は記録されない
過去の税金の滞納が住宅ローン審査に影響するのかを確認していきましょう。
信用情報機関が保有しているのは、クレジットカードやローンなどの与信取引に関する情報です。したがって、税金の滞納履歴そのものはCICなどの個人信用情報には記録されません。
つまり、納税証明書を求められた場合でも、納税状況をきれいにしてから証明書を取得すれば、過去の滞納が審査で問題視される可能性は低いということです。申し込みの時点で未納がなければ、金融機関が過去の滞納を把握する手段は限られます。
ただし、「隠したまま通す」ことを目指すべきではありません。長期の滞納は預金口座などの差し押さえ(滞納処分)につながり、差し押さえを受けた状態で住宅ローンを申し込んでも審査には通りません。また、申込書に事実と異なる申告をすれば、契約後に発覚した際に契約違反として一括返済を求められる可能性があります。滞納は「バレるかどうか」ではなく「返済を続けられる家計かどうか」の問題として向き合うのが本筋です。
書類提出の時点で未納がなければ審査上の障害にはなりにくい税金の滞納ですが、万全を期すためにも未納・滞納が発生しないよう、特に自営業の方は日ごろから注意しておく必要があります。
住宅ローンで求められる納税証明書とは
納税証明書は税務署(国税)や市区町村(住民税など地方税)が発行する書類で、国税の納税証明書には証明する内容ごとに次の種類があります。
- その1…納付すべき税額・納付済額・未納税額を証明
- その2…所得金額を証明
- その3…未納の税額がないことを証明
- その4…証明を受けようとする期間に滞納処分を受けたことがないことを証明
自営業・個人事業主が住宅ローンを申し込む際は、収入と納税状況を確認するために「その1」「その2」や直近数年分の確定申告書の控えを求められることが一般的です(必要書類は金融機関により異なります)。取得は税務署の窓口・郵送・e-Tax(オンライン)で行えます。
手数料は、窓口や郵送で書面請求する場合は1税目1年度につき1枚400円、e-Taxでオンライン請求して書面で受け取る場合は1枚370円です。電子ファイル(電子納税証明書)で受け取る場合も370円で、こちらはコピーして複数の提出先に使える点が便利です(2026年8月時点。最新は国税庁・e-Taxの案内でご確認ください)。
注意したいのは、納付してから証明書に反映されるまでに時間がかかることです。納付直後に請求すると「未納あり」の状態で発行されてしまうことがあるため、完納してから日数の余裕をもって取得しましょう。住民税など地方税の証明書は、お住まいの市区町村の窓口で取得します。
個人信用情報を確認するには
税金の滞納は個人信用情報に記載されませんが、ローン返済の長期の遅延・滞納や、債務整理をした場合は個人の信用情報に記録されます。
登録期間は機関ごとに定められており、たとえば日本信用情報機構(JICC)は「契約継続中および契約終了後5年以内」としています。CICも同様に、契約終了後一定期間は記録が残ります。「延滞が解消すればすぐ消える」わけではない点は誤解しやすいので注意しましょう。
こういった情報は住宅ローンの審査には、当然ですが不利になります。
思い当たることがある場合には、住宅ローン審査を申し込む前に確認しておきましょう。自身の個人信用情報にご不安な方は、下記の各指定信用情報機関のwebサイトから開示請求をして確認することができます。
住宅ローンは銀行が窓口になることが多いため、CIC・JICCだけでなく、銀行系の全国銀行個人信用情報センター(KSC)も確認しておくと安心です。3機関はそれぞれ独立して情報を保有しており、登録内容も一致するとは限りません。
どうしても納付が難しいときは「猶予制度」を相談する
資金繰りの都合で期限までに納付できない場合、放置するのが最も不利な選択です。国税には、一定の要件を満たす場合に納付を待ってもらったり分割で納めたりできる「納税の猶予」「換価の猶予」といった制度があり、認められると延滞税の一部が免除されることもあります。地方税にも同様の仕組みがあります。
また、延滞税は納期限の翌日から日数に応じてかかり、納期限から2か月を超えると割合が大きく上がります。早く動くほど負担は小さくなるということです。要件・手続き・割合は国税庁およびお住まいの自治体のページでご確認ください。
住宅ローンを申し込むときには納税を済ませておく
税務署や市区町村の納税関連部署は、私たちが思っている以上に税務に関する相談にのってくれることが多いので、納税に関して不安や相談がある場合は、気兼ねせずに公的機関に相談するようにしましょう。
住宅ローンは毎月計画的に返済を続けていかなければなりません。税金もしっかり払えない状況では、住宅ローンの返済も苦労することになってしまいますので、ご自身のライフスタイル、マネープランをしっかりと見直したうえで、住宅ローンの申込みを行うようにしましょう。

自営業で住宅ローン審査に不安がある場合はフラット35がおすすめ
税金の未納もなく、ローン返済に関しても過去に遅延などしていないとしても、自営業である場合には住宅ローン審査に不安がある方も多いかもしれません。
そんな方におすすめなのが、住宅金融支援機構と金融機関が提携して提供しているフラット35です。
フラット35は「国策」の住宅ローン商品であり、国民に長期固定金利で資金を提供し、マイホーム購入をサポートすることを目的としています。そのため他の民間金融機関と住宅ローン審査の基準が大きく違う可能性があります。住宅ローン審査に不安がある方は、申し込んでみる価値のある住宅ローンです。
実際、フラット35の利用条件には勤続年数や雇用形態が要件として掲げられておらず、判断の軸は申込時の年齢(満70歳未満)、年収に占める年間合計返済額の割合(総返済負担率が年収400万円未満で30%以下、400万円以上で35%以下)、そして物件が機構の技術基準に適合しているかどうかに置かれています。自営業で収入に波がある人でも土俵に上がりやすいのは、この設計によるものです。
参考までに、2026年8月に資金を受け取る場合のフラット35(返済期間21年以上35年以下・融資率9割以下・新機構団信付き)の金利は年3.290%で、前月の年3.140%から0.150%上昇しました(取扱金融機関に提供される金利のうち最も多い金利)。金利は毎月改定されるため、申し込みの際は【フラット35】公式サイトで最新の金利をご確認ください。
ただ1つ注意しておきたいのは、多くの金融機関が提供しているフラット35ですが、同じ商品にもかかわらず、金利や事務手数料に違いがあることです。おすすめは、最低水準の金利と事務手数料で、顧客満足度や取扱シェアの高い金融機関に申し込むことです。
SBIアルヒ(旧ARUHI)のフラット35
SBIアルヒ(旧ARUHI/旧SBIモーゲージ)は、フラット35を扱う多数の金融機関の中でも国内最大手の住宅ローン専門金融機関です。2025年度の【フラット35】実行件数(借り換えを含む)シェアは27.7%で、16年連続でシェア第1位の実績を誇っています。これはフラット35の取り扱いに最も慣れていることを示しており、同社経由の審査にはノウハウ面・スピード面でメリットがある可能性もありますね。融資事務手数料は借入額×2.20%(税込・最低22万円)です。
※2010年度-2025年度統計、取り扱い全金融機関のうち借り換えを含む【フラット35】実行件数(2026年3月末現在、SBIアルヒ調べ)
なお、安定した収入があれば、フラット35だけでなく民間の住宅ローンも選択肢になります。SBI新生銀行は保証料0円・一部繰上返済手数料0円で、事務手数料も借入金額×2.20%(税込)の定率型と諸費用の内訳が分かりやすく、一般団信のほか全疾病保障付団信も金利の上乗せなしで用意されています。店舗相談とオンライン手続きの両方に対応しているため、書類の準備に不安がある自営業の方でも相談しながら進められます。フラット35と並べて、総返済額と諸費用の合計で比較してみるとよいでしょう(各商品の最新条件は公式サイトでご確認ください)。
税金の滞納と住宅ローンに関するよくある質問
Q. 過去に税金を滞納しましたが、今は完納しています。住宅ローンに影響しますか?
申込時点で未納がなければ、過去の滞納が審査に直接影響する可能性は低いと考えられます。税金の滞納履歴はCICなどの信用情報機関には記録されず、納税証明書には「その時点で未納があるか」が反映されるためです。ただし、滞納が原因でローンの返済遅延など信用情報に傷が残っている場合は別途影響します。
Q. 住民税を滞納しています。どうすればよいですか?
まずは申込前に完納しておくことが基本です。一括での納付が難しい場合は、放置せず市区町村の納税窓口に相談しましょう。分割納付(分納)などの相談に応じてもらえることがあります。差し押さえを受けた状態では審査に通りません。
Q. 猶予制度で分割納付中ですが、住宅ローンは申し込めますか?
申し込み自体は可能ですが、納税証明書には未納額が残った状態で記載されるため、審査は厳しくなります。評価は金融機関によって分かれるので、公的機関と合意のうえ計画的に納付している事実を示せる書類(猶予の許可通知など)を用意し、事前に相談しておくとよいでしょう。可能であれば、完納してから申し込むのが確実です。
Q. 国民健康保険料や国民年金保険料の滞納も影響しますか?
これらは税金ではなく保険料のため、国税の納税証明書には表れません。ただし、滞納が続けば督促や財産の差し押さえの対象になり得ます。差し押さえは住宅の購入・登記や住宅ローンの実行に支障をきたすため、税金と同じく早めに市区町村・年金事務所へ相談してください。
Q. 納税証明書はどこで取得できますか?
国税の納税証明書は、所轄の税務署の窓口・郵送・e-Tax(オンライン請求)で取得できます。手数料は書面請求が1税目1年度につき1枚400円、e-Taxでのオンライン請求は370円が目安です。住民税など地方税の証明書は市区町村の窓口で取得します。納税直後は納付が反映されるまで発行できない場合があるため、余裕を持って手続きしましょう(最新の手続きは国税庁・お住まいの自治体の案内でご確認ください)。
まとめ:見られるのは「過去」ではなく「申込時点の未納」
税金の滞納は信用情報機関には記録されませんが、納税証明書には申込時点の未納がそのまま表れます。逆にいえば、完納して証明書をクリーンな状態にできれば、過去のつまずきが尾を引くことは少ないということです。納付が難しい場合は放置せず、猶予制度も含めて税務署・市区町村に相談するのが、結果的に最短の道になります。
そのうえで、自営業で審査に不安があるならフラット35のように勤続年数や雇用形態を条件に掲げないローンも候補に入れ、金利と諸費用を合わせた総額で比較しましょう。最新の金利・手数料・手続きは、必ず各公式サイトでご確認ください。










