知っておいて欲しい地震保険の仕組み

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2018年9月6日早朝に北海道で震度7の大地震が発生しました。平成30年北海道胆振東部地震と名付けられたこの地震は北海道全域の長期停電を引き起こし、復旧の足掛かりもまだこれからという状況です。近年でも熊本・中越・島根・大阪北部で震度5強以上の地震が相次いでいます。

この記事では地震に備える保険である地震保険について解説したいと思います。

大規模地震発生時の地震保険金支払額

最初に近年発生した大規模地震で損害保険会社が支払った地震保険の支払総額を確認して欲しいと思います。

東日本大震災:1兆2,167億円

平成28年熊本大地震:3,621億円

阪神・淡路大震災:783億円

※今回の平成30年北海道胆振東部地震の地震保険の支払額はまだ不明ですが、東日本大震災を超える可能性は無いと思います。

 

上記の金額は地震による被害の規模を計る指標にもなりますし、かつ、地震保険に加入していたことで生活再建のためのお金を受け取ることができた人の数と捉えることもできます。

 

地震保険の勘違い

大規模地震があると保険会社が保険金を支払うことができる規模ではないので地震保険に加入していてもほとんど意味がない」と考えている人がいるのではないでしょうか?

 

その認識は半分正解で半分間違いです。

 

実際、大規模地震対する備え・保険は保険会社で対応できるようなものではありません。仮に東日本大震災や北海道胆振地震の規模が首都圏直下型で発生したら東日本大震災の数倍の規模の被害が発生することになります。いつ起こるかも予想できない地震のために1兆円を超える規模のお金を民間企業が用意することはできません。

 

ですので、「大規模地震があると保険会社が保険金を支払うことができる規模ではない」という点は正解です。

 

ただし、地震保険は保険会社の責任負担を一定金額に抑え、それを超える部分を保険会社に対して国が支払う仕組み(日本政府による再保険)で成り立っています。つまり、税金を活用した国による保障制度で、保険会社を国がサポートすることで地震保険を成り立たせているわけです。

 

1回の地震などで国が支払う保険金の金額は国会で議決されていて11兆円弱です。民間企業が支払う保険金と合わせて11.3兆円です。単純計算で東日本大震災9回分の保険料が予算化されていることになりますので、後半部分の「加入していてもほとんど意味がない」は勘違いであることがわかると思います。

 

なお、東京都直下型で東日本大震災級の地震が起きると11兆円程度では全く足りないと試算されています。この点は財務省も当然認識しています。財務省もこの事実は認識していて、万が一、11兆円で足りない規模の被害がでた場合は、特別予算を確保する動きをとることになる、としていますので、杓子定規に11兆円が上限になるとは考える必要もありません。

誤解を恐れずに言うと、地方での大地震であれば国が想定している予算を超える可能性はほとんどありませんので安心して地震保険に加入して欲しいと思います。

 

地震保険における保険会社は単なる窓口に近い

地震発生時に支払われる最大額の地震保険金のうち97%が政府で民間の保険会社はわずか3%しか負担しておらず、まさに地震保険は日本政府が成り立たせている保険だということがわかります。

実は、私たちが地震保険を契約しても保険会社にはほとんど儲けがありません。保険会社から保険の勧誘やダイレクトメールなどで商品の案内を受けたことは誰しもがあると思いますが、地震保険への加入を積極的に案内されたことはあるでしょうか?ほとんどないと思います。

 

地震保険はその性質上と制度の仕組み上、保険会社にとってビジネスとして成り立っていないからです。

 

地震保険は家を建て替えるために入る保険ではない

地震保険に加入していたとしても新しくマイホームを建て直せるほどの保険金が受け取れるわけではありません。このせいで地震保険になんか加入しても意味がないと勘違いしてしまう人が増えてしまっているのだと思いますが、マイホームが全壊しても住宅ローンは残ります。今までと同じように返済を続けなければならないのです。

存在しない家のためのローンを支払い続けるのは非常につらいものです。そんなときに、住宅の3割~5割の保険金を受け取れる地震保険に加入しているかどうかは大きな分岐点になりかねません。

 

地震保険は黙っていても保険会社から勧誘されることもほとんどありませんので加入せずに終わってしまいがちです。相次ぐ自然災害を教訓に地震保険への加入を今一度検討してみるようにしてください。

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