総務省・厚生労働省の労働統計によると、派遣社員・契約社員として働く人は日本国内に多数存在し、勤労者全体の一定割合を占めています(総務省統計局・労働力調査はこちら)。
この記事では、派遣社員・契約社員として働く人の住宅ローンの審査について解説します。派遣社員・契約社員は、いわゆる「非正規雇用」の働き方で、近年は正規雇用との待遇差などで注目を集めることが増えています。
正社員も終身雇用が当たり前の時代は終わりを迎えたとも言われます。能力や技術があれば正規・非正規で大差ないとも考えられますが、現状の日本の住宅ローンの審査においては「正規雇用」が有利で、非正規雇用(派遣社員など)がどうしても不利になりがちです。本記事では、その理由と対策、雇用形態を重視しすぎない住宅ローンについて整理します。
目次
派遣社員・契約社員は住宅ローン審査に通りにくいのは本当?
派遣社員・契約社員でマイホームを持つのは夢のまた夢、住宅ローンの審査にも落ちるに決まっていると思い込んでいる人は多いですが、決してそんなことはありません。
派遣社員・契約社員で住宅ローンを組めたという声は世の中にたくさんありますし、ひとり親で派遣社員として働いている方でも、住宅ローンを契約してマイホームを購入した人はたくさんいます。
ただし、派遣社員・契約社員の場合、「公務員」や「正社員」と比べると、選べる住宅ローンの選択肢が限られてしまうのも事実です。最初から派遣社員・契約社員では利用できない住宅ローンもあれば、あっさり審査に落ちてしまう住宅ローンもあります。
頭に入れておいてほしいポイントは2つです。1つ目は雇用形態が派遣・契約だとなぜ住宅ローンの審査に通りにくいのかを理解して対策すること。もう1つは、審査するときに雇用形態をそれほど重視していない住宅ローンの存在を知っておくことです。
なぜ、派遣社員・契約社員は住宅ローン審査で不利と言われているのか?
住宅ローンは最大で35年(最近は50年ローンも登場)という長い時間をかけて返済するローンです。借り入れ金額も数千万円と高額で、数年で返し終わる自動車ローンや教育ローンとは比べものになりません。
金融機関側の視点では、住宅ローンは安定して返済してくれる人に限定して貸したい商品です。つまり「今の収入」だけでなく、「収入の継続性」「今後の収入」を加味して審査します。金融機関が何を考えて審査しているのかを理解することが重要です。
「派遣社員・契約社員」が住宅ローンの審査で不利と言われるのは、まさにこの点です。例えば20代・30代だと「正社員より派遣社員の方が収入が良い」ということもありますが、それでも「正社員」の方が審査に通りやすいのは「収入と返済能力の継続性」が統計的に高いと見られているためです。
大半の派遣社員は特別な技術や知識だけを武器に働いているわけではないため、不景気や会社の業績悪化のときに雇用を打ち切られる可能性がある、という見方をされやすいのが実情です。
なお、労働者派遣法では、同一の事業所の同一組織で同一人物を3年を超えて派遣社員として受け入れることが原則できないルール(いわゆる3年ルール)があります。3年が経過する場合は、派遣先が直接雇用(正社員・契約社員など)に切り替えるか、派遣先・組織を変えるなどの対応が必要になります。金融機関もこの派遣法を把握しているため、3年周期で派遣先が変わっている状態が続くと、正社員になれずにいると判断される可能性もあります。
重要なのは「安定した収入の継続性」、つまり「これまで継続して収入を得ているか」
まず、雇用形態を問わず重要になるのは、過去の実績として継続的に収入を得ているかという点、つまり勤続年数です。
住宅ローンによって審査内容は異なりますが、必ずしも「同じ会社に連続して勤続しているか」だけが審査項目になっているわけではありません。正社員であろうと派遣社員であろうと、毎月収入を得ていたかという点が重視されます。
収入が途絶えた経験があると、住宅ローンの審査では厳しく見られます。必ず落ちるとまでは言いませんが、直近3年間で収入が途絶えたことがある人は、申し込む住宅ローン選びを慎重に行いましょう。
続いて、「雇用形態をそれほど重視しない審査基準としている住宅ローン」について確認していきましょう。
※「雇用形態をそれほど重視していない住宅ローン」か否かは、当サイトを含め外部の人間では正確には把握できません。一般公開されている情報から推測する必要があります。
金融機関の雇用形態に対する姿勢を事前に確認
憶測で語るよりも確実でわかりやすいのが、金融機関が開示している申込条件・審査基準を確認することです。
利用できる雇用形態を明確に公表している金融機関と、触れていない金融機関に分かれていますが、単刀直入に言えば、利用できる人の雇用形態が明示されていて、かつ「派遣社員」「契約社員」でも利用できると明記されている住宅ローンは、派遣社員・契約社員の方に適した住宅ローンの可能性が高いと考えるのが自然です。
「派遣社員・契約社員はNG」と記載している住宅ローンは申し込めませんが、働き方・雇用形態について触れていない住宅ローンも基本的には審査に通りにくいと考えておいた方が無難です。「絶対に落とすとは限らないから書いていないだけ」というケースが多いためです。
それでは、主要金融機関の対応状況を確認しておきましょう(2026年6月時点・各社公式の申込条件等にもとづく目安。「契約社員」「派遣社員」で条件が違うことがあるのでそれぞれ記載しています。最新・詳細の条件は必ず各社公式でご確認ください)。
住宅ローン審査における契約社員・派遣社員の利用可否
| 金融機関 | 契約社員 | 派遣社員 |
|---|---|---|
| SBIアルヒ フラット35 | 〇 | 〇 |
| 住信SBIネット銀行 フラット35 | 〇 | 〇 |
| auじぶん銀行 | 〇 | 〇 |
| イオン銀行 | △※1 | △※1 |
| SBI新生銀行 | 〇 | × |
| みずほ銀行 | 〇 | 〇 |
| ソニー銀行 | × | × |
| 三菱UFJ銀行 | 〇 | 〇 |
※1 イオン銀行では「健康保険・厚生年金保険の被保険者であり、雇用保険への加入が確認できること」が条件として明記されています(最低年収100万円以上・勤続6か月以上)。
派遣社員・契約社員でも利用しやすいことで有名なフラット35はもちろん対応しています。一方で、SBI新生銀行は「前年度税込年収300万円以上の正社員または契約社員」が条件のため契約社員は申し込めますが派遣社員は対象外、ソニー銀行は契約社員・派遣社員とも対象外(前年度年収400万円以上が条件)と、銀行によって明確に分かれています。auじぶん銀行やイオン銀行は、雇用形態を明示したうえで条件を満たせば可能とし、総合的に判断する旨を案内しています。
現時点の申込条件や金利面から「雇用形態をそれほど重視していない(可能性がある)住宅ローン」として比較検討先に加えてほしいのは2社です。1社目はauじぶん銀行です。auじぶん銀行の住宅ローンは、がん保障や入院保障などの疾病保障が付帯するプランがあり、返済中の想定外の病気やケガに備えやすい点が魅力です。
もう1つは「フラット35最大手」のSBIアルヒです。SBIアルヒはフラット35の実行件数で16年連続シェアNo.1(2010〜2024年度/SBIアルヒ調べ)。つまり「さまざまな事情を抱える人の住宅ローンをサポートしてきた実績がある」のと、全国に多数の店舗があり相談しやすいという点でおすすめです。
他にも気を付けておきたいポイントがありますので、最後にあらためて確認しておきましょう。
派遣社員・契約社員の人に注意してほしい審査項目・注意点
勤続年数
派遣社員の方は所属の派遣会社での勤務年数、契約社員の方は勤務先での勤続年数が基準となります(「派遣されている先」での勤続年数ではありません)。自営業と比較すると勤続年数は厳しく見られませんが、最低でも1年、できるだけ3年連続して勤続していることが望ましいと考えておきましょう。
年収
全員が該当するわけではありませんが、「正社員」よりも「派遣社員」「契約社員」の収入は低くなりがちなので、年収に関する制約も確認しておきましょう。例えば、イオン銀行は年収100万円以上、SBI新生銀行は300万円以上(正社員または契約社員)、ソニー銀行は400万円以上など、金融機関によって条件が異なります。ご自身の年収に合わせて、申し込む住宅ローンを選びましょう。
なお、派遣社員や契約社員でも契約が可能なフラット35には、明確な年収の下限がありません。借り入れ希望金額や総返済負担率によっては年収100万円程度でも借り入れ可能とされています。ただし、年収に占めるすべての借入の年間返済額(カードローンや自動車ローンを含む)の割合(=総返済負担率)の基準があるので注意しましょう(年収400万円未満は30%以下、400万円以上は35%以下)。
年収ごとの借入限度額は?
以下は、元利均等返済でフラット35を35年ローンで借りた場合の借入限度額の試算です(他の借り入れ・返済がない場合)。※一定の金利を想定した目安です。2026年6月時点のフラット35(買取型)の最頻金利は年3.210%と上昇しており、同じ年収でも実際の借入限度額は下表より小さくなります。最新の金利で公式シミュレーターをご利用ください。
| 年収 | 限度額(一定金利・35年返済と仮定した目安) |
| 150万円 | 1,244万円 |
| 200万円 | 1,659万円 |
| 250万円 | 2,074万円 |
| 300万円 | 2,489万円 |
| 350万円 | 2,903万円 |
| 400万円 | 3,871万円 |
| 450万円 | 4,355万円 |
カードローンやリボルビング払いなどの借入
正社員の方でも、カードローンやリボルビング払いなどの借入があると、住宅ローンの審査が通らない場合や、銀行がその完済を住宅ローン融資の条件とする場合があります。どうしても審査で厳しく見られがちな派遣社員・契約社員の方は、住宅ローン審査の際にこれらの利用残高をない状態にして申し込んでおくとよいでしょう。
ちなみに、スマートフォン本体の代金を毎月の携帯電話料金と合わせて分割(割賦)で返済する方法が主流ですが、この割賦も個人信用情報機関に登録されるので、支払い遅延などは絶対にないように心がけましょう。
頭金・自己資金
雇用形態を問わず、「自己資金」「頭金」を準備できているかどうかは重要です。審査の面では「計画的にお金を貯蓄してきた実績」を示す材料となりますし、何よりも借り入れる金額を抑える効果があります。頭金を用意することで返済負担率を低めにできますので、住宅ローン借り入れ後のゆとりある生活のためにも、可能な限り準備できるとよいですね。もちろん、「頭金なし」「自己資金なし」でも住宅ローンの借り入れは可能です。
派遣社員・契約社員の方が利用しやすいおすすめの住宅ローン
よくある質問(FAQ)
派遣社員でも住宅ローンは組めますか?
組める可能性は十分にあります。特にフラット35は雇用形態を問わず、継続した収入があれば派遣社員・契約社員でも申し込めます。ネット銀行でもauじぶん銀行やイオン銀行(社会保険加入が条件)など、非正規雇用に対応している商品があります。一方で、ソニー銀行のように非正規雇用は対象外の銀行もあるため、申し込む前に各社の条件を確認することが大切です。
審査で見られる「勤続年数」は派遣先と派遣元のどちらですか?
派遣社員の場合は、所属している派遣会社(派遣元)での勤務年数が基準になります。派遣先での勤続年数ではありません。最低でも1年、できれば3年程度の継続勤務が望ましいとされています。
審査を通りやすくするためにできることは?
カードローン・リボ払いなどの残高を完済しておく、携帯電話の分割払いを含め支払いの遅延を作らない、頭金(自己資金)を準備しておく、複数の金融機関に申し込んでおく、といった対策が有効です。返済負担率に余裕をもたせることが、審査通過の可能性を高めます。
まとめ
派遣社員・契約社員でも、継続した収入があり、申込条件に合う住宅ローンを選べばマイホームの取得は十分に可能です。雇用形態を問わないフラット35(SBIアルヒ・住信SBIネット銀行など)や、非正規雇用に対応するauじぶん銀行・イオン銀行が有力な選択肢になります。
契約社員で前年度税込年収が300万円以上ある方であれば、SBI新生銀行も検討候補です。SBI新生銀行は保証料・一部繰上返済手数料・一般団信が0円で、店舗とオンラインの両方に対応しているため、諸費用の分かりやすさを含めて比較してみるとよいでしょう(派遣社員は対象外)。いずれの場合も、最新の申込条件・金利は各社公式で確認したうえで、総返済額で比較して選ぶことをおすすめします。










