暗号資産(仮想通貨)の売却や交換で得た利益は、原則として雑所得に区分され、給与などほかの所得と合算する総合課税の対象になります。所得税は5〜45%の累進税率で、住民税10%と合わせた最高税率は55%です(このほかに復興特別所得税がかかります)。
2026年には20%の分離課税を導入する改正法が成立しましたが、適用されるのは金融商品取引法の改正法が施行された年の翌年1月1日以後の取引からです。2026年中に売却や交換をした分は、これまでどおり雑所得として2027年3月15日までに確定申告します。
目次
暗号資産の利益は雑所得として給与と合算される
雑所得とは、所得税法が定める10種類の所得のうち、給与所得や事業所得などほかの9種類のどれにも当たらない所得のことです。国税庁の「暗号資産等に関する税務上の取扱いについて(FAQ)」は、暗号資産取引で生じた利益を原則としてこの雑所得に区分しています(令和7年12月1日現在の法令による)。
雑所得は給与所得などと合算され、合計した課税所得に累進税率がかかります。このため、同じ50万円の利益でも、給与が多い人ほど適用される税率が高くなり、手元に残る金額は人によって変わります。
| 課税される所得金額 | 所得税の税率 | 控除額 |
|---|---|---|
| 1,000円〜1,949,000円 | 5% | 0円 |
| 1,950,000円〜3,299,000円 | 10% | 97,500円 |
| 3,300,000円〜6,949,000円 | 20% | 427,500円 |
| 6,950,000円〜8,999,000円 | 23% | 636,000円 |
| 9,000,000円〜17,999,000円 | 33% | 1,536,000円 |
| 18,000,000円〜39,999,000円 | 40% | 2,796,000円 |
| 40,000,000円以上 | 45% | 4,796,000円 |
※国税庁タックスアンサーNo.2260(令和8年4月1日現在法令等)による所得税の速算表。2026年分は所得税額の2.1%の復興特別所得税が加わります。国税庁 No.2260 所得税の税率
住民税の所得割は、前年1月から12月までの所得に対して10%(道府県民税4%、市町村民税6%)がかかると総務省は説明しています。暗号資産の利益が増えると、所得税と同時に翌年度の住民税も増える仕組みです。
年間の収入が300万円を超えると、帳簿の有無で区分が変わる
FAQでは、その年の暗号資産取引による収入金額が300万円を超える場合の扱いも示されています。帳簿書類を保存していれば原則として事業所得、保存していなければ原則として業務に係る雑所得です。事業所得になるかどうかは、営利性などを個別に判断するとされています。
収入金額は売却代金などの合計で、利益の額とは別の数字です。売買の回数が多い人は、利益が小さくても収入金額が300万円を超えることがあります。
利益が出る場面は、売却・支払い・交換・報酬の受け取り
暗号資産の所得は、日本円に換えたときだけに生じるわけではありません。国税庁のFAQは、次のような取引ごとに所得の計算方法を示しています。
- 暗号資産を売却して日本円などを受け取ったとき
- 暗号資産で商品やサービスの代金を支払ったとき
- 保有する暗号資産で別の暗号資産を購入(交換)したとき
- マイニングやステーキング、レンディングで暗号資産を受け取ったとき
買い物に使った場合は、保有する暗号資産を譲渡したことになります。支払った商品の価額と、使った暗号資産の取得価額との差が所得として計算されます。
交換した場合は、受け取った暗号資産の時価で手放した暗号資産を売ったものとして扱います。たとえば取得価額100万円の暗号資産Aを、時価130万円分の暗号資産Bに交換すると、日本円を1円も受け取っていなくても30万円の所得が生じます。
このとき暗号資産Bの取得価額は、交換した時点の時価である130万円です。交換を繰り返して最後まで円に戻さなかった場合でも、交換のたびに所得が確定し、納税は日本円で行うため、税金分の資金を別に用意しておく必要があります。
マイニングやステーキングなどで受け取った暗号資産は、取得した時点の時価が収入になります。それを得るためにかかった費用は必要経費に算入できるとFAQは説明しています。
所得金額は、収入金額から取得価額と手数料を差し引いて計算する
暗号資産の所得金額は、売却などで得た収入金額から、手放した暗号資産の取得価額(譲渡原価)と必要経費を差し引いて求めます。FAQでは、売却時に支払った手数料が必要経費の例として挙げられています。
回線利用料やパソコンの購入費も、暗号資産の売却のために直接必要と認められる部分に限って必要経費にできます。私用と混ざっている費用は、取引分を明確に区分できる場合だけが対象です。
取得価額は総平均法か移動平均法で求め、届出がなければ総平均法
同じ暗号資産を何回かに分けて買うと、1単位あたりの取得価額がその都度変わります。FAQはこの単価の計算方法として、1年分の購入額をまとめて平均する総平均法と、購入のたびに平均単価を計算し直す移動平均法の2つを示しています。
どちらを使うかは、初めて暗号資産を取得した年分の確定申告期限(原則として翌年3月15日)までに、納税地の税務署長へ届け出ます。届出をしなかった場合は総平均法になります。
国税庁は総平均法用と移動平均法用の計算書(Excel)を公開しています。暗号資産交換業者から届く年間取引報告書を使って計算するときは、総平均法用を使うよう案内されています。
1年間の取引で、雑所得と増える税額を計算してみる
会社員が2026年に次の取引をしたと仮定して、雑所得を総平均法で計算します。価格はすべて説明用の仮定で、手数料は省いています。
| 時期(仮定) | 取引の内容 | 金額 |
|---|---|---|
| 3月 | 2単位を1単位90万円で購入 | 購入額 180万円 |
| 6月 | 1単位を1単位120万円で購入 | 購入額 120万円 |
| 9月 | 1.5単位を1単位150万円で売却 | 収入金額 225万円 |
| 11月 | 0.2単位で24万円の商品を購入 | 収入金額 24万円 |
総平均法の単価は、購入額の合計300万円を購入数量3単位で割った100万円です。手放したのは合計1.7単位なので、譲渡原価は170万円になります。収入金額は249万円で、雑所得は249万円から170万円を引いた79万円です。
この例では購入をすべて売却より前に済ませているため、移動平均法で計算しても単価は100万円で変わりません。売却と購入が交互に続く場合は、2つの方法で譲渡原価に差が出ることがあります。
次に、給与などから計算した課税所得がもともと500万円だった人を考えます。雑所得79万円を加えると課税所得は579万円で、所得税の税率は20%のままです。増える税額の目安は次のとおりです。
| 税目 | 計算 | 増える税額の目安 |
|---|---|---|
| 所得税 | 79万円×20% | 158,000円 |
| 復興特別所得税 | 158,000円×2.1% | 3,318円 |
| 住民税(所得割) | 79万円×10% | 79,000円 |
| 合計 | 上記の合計 | 約24万円 |
※住民税は所得控除の額が所得税と異なるため、実際の増加額は目安とずれることがあります。課税所得が税率の区分をまたぐ場合は、上の部分だけ高い税率で計算します。
このように、利益の約3割が税金になる計算です。課税所得が695万円以上になる人は23%以上の税率がかかるため、同じ79万円の利益でも負担はさらに大きくなります。
損失は給与と相殺できず、翌年へ繰り越すこともできない
暗号資産の取引で損をした年は、給与所得などから損失を差し引きたくなります。しかし国税庁のFAQは、雑所得の計算上生じた損失は、給与所得など他の所得と損益通算できないとしています。
上場株式の譲渡損失のように、使い切れなかった損失を翌年以後へ繰り越す制度も、2026年10月時点の雑所得にはありません。ある年に100万円の損失、翌年に100万円の利益が出た場合、翌年は100万円の利益にそのまま課税されます。
値下がりした暗号資産を年内に売るか翌年に回すかで、その年の所得が変わります。年末が近づいたら、その年の損益を一度計算しておくと、申告の準備と資金の手当てを早く始められます。
会社員は20万円を超えると確定申告、住民税の申告は別に必要
給与を1か所から受けていて、その全部が源泉徴収されている会社員は、給与と退職金以外の所得の合計が20万円を超えると確定申告が必要です(国税庁タックスアンサーNo.1900)。暗号資産の雑所得は、副業の所得などと合計して判定します。
20万円以下で確定申告をしない場合でも、住民税は別です。神戸市は、給与以外の所得が20万円以下で所得税の確定申告が要らない人も住民税の申告が必要と案内しており、期限は3月15日です。20万円の数え方と住民税の申告については、確定申告が必要な会社員の条件と20万円ルールで詳しく整理しています。
申告をしないまま税務署から指摘を受けると、本来の税金に加えて加算税や延滞税がかかります。税金の未納が残ると住宅ローンの審査で納税証明書を求められたときにも問題になるため、税金の滞納が住宅ローン審査に与える影響もあわせて知っておくと判断に役立ちます。
分離課税の改正法は成立済み、適用は金融商品取引法の施行の翌年から
2025年12月26日に閣議決定された「令和8年度税制改正の大綱」は、暗号資産取引業者を通じた特定暗号資産の譲渡等による所得を、他の所得と分離して20%(所得税15%、住民税5%)で課税するとしました。この大綱を受けた所得税法等の改正法は、2026年3月31日に成立しています。
特定暗号資産とは、大綱では金融商品取引業者登録簿に登録されている暗号資産等とされています。大綱では損失を翌年以後3年間繰り越せる制度も示されています。一方、特定暗号資産以外の暗号資産は引き続き総合課税で、他の所得との損益通算は認められません。
適用の開始は、金融商品取引法の改正法の施行日が属する年の翌年1月1日以後の譲渡等とされています。この改正法は2026年7月15日に成立し、暗号資産関係の規定は公布の日から1年以内に政令で定める日に施行されます。施行日は2026年10月時点で決まっておらず、分離課税が始まるのは早くても2027年1月以後の取引です。
2026年中の取引は、新しい制度の対象になりません。改正の詳細は今後の政令や省令、国税庁の案内で具体化されるため、2027年以後の取引は時期と対象を確認しながら計画することになります。
よくある質問
Q. 暗号資産を売らずに持っているだけでも、値上がりすれば税金がかかりますか?
A. 個人の場合、保有しているだけでは所得は生じません。所得が計算されるのは、売却や買い物での使用、別の暗号資産との交換などをしたときです。値上がりした暗号資産を交換したときも課税される点に注意が必要です。
Q. 年間取引報告書があれば、そのまま確定申告に使えますか?
A. 国内の暗号資産交換業者が交付する年間取引報告書の数字を、国税庁の総平均法用の計算書に入力すれば所得を計算できます。複数の業者を使っている場合や、ウォレット間で移し替えた場合は、すべての取引を合わせて計算します。
Q. 2026年に売った利益から、税率20%の分離課税になりますか?
A. なりません。分離課税は金融商品取引法の改正法が施行された年の翌年1月1日以後の取引が対象で、施行日は2026年10月時点で未定です。2026年中の売却や交換は雑所得として総合課税で申告します。
Q. 暗号資産で損をした年に、確定申告で給与の税金を取り戻せますか?
A. 取り戻せません。暗号資産の雑所得で生じた損失は、給与所得など他の所得と損益通算できないと国税庁のFAQに示されています。翌年への繰越しも、現行の総合課税では認められていません。
制度や商品の内容は改正・改定されることがあるため、利用前に各機関の最新情報で確かめてください。










