海外送金の手数料は、依頼した銀行に払う送金手数料、途中の銀行が差し引く中継銀行手数料、円と外貨を替えるときの為替手数料の3つに分けて考えます。このうち為替手数料は明細に金額が出ず、換算レートの中に含まれる形で負担します。
そのため、送金手数料が安くても、レートへの上乗せが大きければ受取額は減ります。以下は、日本銀行・財務省・全国銀行協会の公表資料と銀行の手数料表を2026年10月に確認し、内訳ごとの仕組みと比べ方を整理したものです。
目次
海外送金の手数料は、誰に払うかで3種類に分かれる
海外送金とは、日本の銀行などから外国の銀行口座へ資金を送ることです。全国銀行協会によると、外国送金は通常、銀行間の国際的な通信網であるSWIFT(スイフト)を通じた送金電文で処理されます。
この流れの中で、手数料を受け取る相手は少なくとも3者います。送金を依頼した銀行、途中で資金を中継する銀行、そして通貨を交換する際の銀行です。3者の性格の違いを表にすると、下のようになります。
| 手数料の種類 | 受け取る相手 | 払い方 | 事前に金額がわかるか |
|---|---|---|---|
| 送金手数料 | 送金を依頼した銀行 | 1回ごとの定額を口座から引き落とし | 手数料表でわかる |
| 中継銀行手数料 | 経由する海外の銀行や受取人の銀行 | 送金額から差し引くか、送金人が前払い | 経由する銀行しだいで、事前にはわからない |
| 為替手数料 | 円と外貨を交換する銀行 | 換算レートに含めて負担 | レートと仲値の差から計算できる |
※2026年10月に全国銀行協会の公表資料と各行の手数料表をもとに作成。
受取人の口座へ届く金額は、送金額から中継銀行手数料などを引いた残りです。送金人が払う総額は、送金額を円に換算した額に送金手数料を足したものになります。2つの金額は別々に動くため、送る側と受け取る側の両方から見ておくと、手数料の重なりに気づけます。
送金手数料は、依頼した銀行に払う1回ごとの料金
送金手数料とは、送金を依頼した銀行が、送金電文の作成や送金先の確認などの事務の対価として受け取る料金のことです。金額は銀行ごとに決まっており、手数料表で事前に調べられます。同じ銀行でも、店頭とインターネットで金額が変わることがあります。
たとえば三菱UFJ銀行の個人向け手数料表では、インターネットバンキングから他行宛てに送ると3,000円、店頭の窓口では7,000円です(2026年10月時点)。ソニー銀行の外貨送金は1回3,000円で、優遇プログラムのステージによって月3回まで無料になります。
円のまま送るとかかる、リフティングチャージ
リフティングチャージとは、円を円のまま、または外貨預金の外貨を同じ通貨のまま送るときに、送金手数料とは別にかかる取扱手数料のことです。両替をしないぶん為替手数料が発生しないため、その代わりとして銀行が定めています。
三菱UFJ銀行では、円建てで送る場合の円為替取扱手数料が送金金額の0.05%で、最低2,500円です。外貨預金から同じ通貨で送る場合も、同じく0.05%(最低2,500円)がかかります。一方、ソニー銀行はリフティングチャージを設けていません(いずれも2026年10月時点)。
受取人の口座が現地通貨建てなら、円建てで送った資金は受取側の銀行で現地通貨に替えられ、そのときのレートは送金人からは見えません。円建てを選ぶ場合は、受け取る側の銀行がどの通貨で入金するかを、事前に受取人に聞いておく必要があります。
中継銀行手数料は、送金の途中で差し引かれることがある
中継銀行手数料とは、送金を依頼した銀行と受取人の銀行の間に入る銀行が、資金の受け渡しの対価として受け取る手数料のことです。コルレス銀行手数料、経由銀行手数料と呼ばれることもあります。
全国銀行協会の説明では、送る通貨や方法によっては最終の受取銀行へ直接送れず、別の外国銀行を経由することがあります。経由する銀行は第三国にある場合もあり、複数になれば手数料もそのぶん重なりえます。
負担する人は、送金のときに選ぶ
中継銀行や受取銀行の手数料を誰が負担するかは、送金を依頼するときに選びます。受取人負担にすると送金額から差し引かれ、送金人負担にすると送金人が前もって定額を払います。ネットの送金では受取人負担しか選べない場合もあります。
三菱UFJ銀行の窓口で送金人負担を選ぶと、支払銀行手数料として3,000円が加わります。ソニー銀行も送金人負担を選ぶと1回3,000円を前払いしますが、それでも関係銀行が送金額から直接差し引く場合があり、手数料が生じなくても返金されないと説明しています(2026年10月時点)。
このように、送金人負担を選んでも、受取額が送金額ちょうどになるとは限りません。学費や家賃のように決まった金額を届けたい場合は、受取人と相談して少し多めに送るか、着金後に不足分を確認する段取りを決めておくと、支払いの遅れを防げます。
為替手数料は、換算レートの中に含まれている
ニュースで報じられる円相場は、銀行同士が取引するインターバンク市場の相場です。日本銀行は、個人が銀行で両替や外貨預金をするときの対顧客取引の相場を小売り段階のものと説明しており、2つは同じではありません。
銀行は毎朝、市場の相場をもとにその日の基準となる仲値(TTM)を決めます。円を外貨に替えるときのレートは対顧客電信売相場(TTS)で、仲値に銀行の為替手数料を足した値です。外貨を円に替えるときは、仲値から手数料を引いた対顧客電信買相場(TTB)が使われます。
三菱UFJ銀行の外国為替相場一覧表では、2026年10月9日10時26分時点で米ドルのTTSが159.17円、TTBが157.17円でした。2つの中間の158.17円が仲値にあたり、円をドルに替える側には1ドルあたり1円が上乗せされている計算です。ソニー銀行は米ドルの為替コストを1ドルあたり15銭としています。
送金手数料が無料でも、為替手数料まで無料とは限りません。送金サービスを比べるときは、表示された手数料に加えて、適用されるレートがその日の仲値からいくら離れているかを確認すると、レートに含まれた負担が見えてきます。
1,000ドルを送る例で、手数料の合計を計算する
例えば、仲値が1ドル158円の日に、円の口座から米国の口座へ1,000ドルを送るとします。為替手数料は1ドルあたり1円、送金手数料は3,000円、中継銀行手数料は送金人負担として3,000円を前払いする条件です。
| 項目 | 1,000ドルを送る場合 | 10,000ドルを送る場合 |
|---|---|---|
| 仲値で換算した金額 | 158,000円 | 1,580,000円 |
| 為替手数料(1ドルあたり1円) | 1,000円 | 10,000円 |
| 送金手数料 | 3,000円 | 3,000円 |
| 中継銀行手数料(送金人負担の前払い) | 3,000円 | 3,000円 |
| 手数料の合計 | 7,000円(約4.4%) | 16,000円(約1.0%) |
※条件を仮定した試算。割合は仲値で換算した金額に対する手数料の合計。
1,000ドルの例では、定額の手数料6,000円が負担の大半を占め、送金額に対する割合は約4.4%になります。少額を何度にも分けて送ると、定額の手数料が回数分かかるため、まとめて送るほうが割合は下がります。
10,000ドルになると為替手数料だけで10,000円となり、定額の手数料を上回ります。為替手数料が1ドルあたり15銭なら1,500円で済むため、送金額が大きい人ほど、送金手数料よりもレートの差を先に比べたほうが、負担の差を正しくつかめます。
送金の前に、受取額から逆算して比べる
海外送金の手数料は内訳ごとに払う相手と時期が違うため、総額で比べないと安いかどうかを判断できません。見積もりを取るときは、受取人に届けたい金額を先に決め、そこから逆算して次の数字をそろえます。
- 適用されるレートと、その日の仲値との差(1通貨あたりいくらか)
- 1回あたりの送金手数料と、円建て・同一通貨で送るときの取扱手数料
- 中継銀行手数料の負担区分と、送金人負担にした場合の前払い額
- 受取人の銀行で差し引かれる受取手数料の有無
銀行以外の送金サービスを使う場合は、事業者の資格も確かめる対象になります。財務省によると、銀行以外の者が送金業務を行うには、資金決済法に基づき資金移動業者として金融庁の登録を受ける必要があります(財務省 外国への送金を業務として行うには)。
送金に使う外貨を外貨預金に置いておく場合は、元本の保護の範囲も変わります。外貨預金は預金保険の対象外で、円の預金のように1,000万円までの保護は受けられません。対象になる預金の範囲は預金保険制度(ペイオフ)の保護範囲の解説で整理しています。
次に、手続きの面では、外国送金や外貨と円の交換は外為法のもとで原則として自由です。ただし送金額が3,000万円相当額を超える場合は、外為法第55条に基づく事後報告が必要になります(財務省 日本と海外との間の送金の手続)。
海外のクライアントから副業の報酬を受け取る会社員は、受取の手数料とは別に、その報酬が申告の対象になるかも整理しておく必要があります。給与以外の所得が年20万円を超えるかどうかの考え方は、確定申告が必要な会社員の条件で解説しています。
海外送金の手数料についてよくある質問
Q. 送金手数料が無料のサービスなら、海外送金のコストはかかりませんか?
A. かかる場合があります。円を外貨に替えるときの為替手数料はレートに含まれるため、明細には出ません。適用レートがその日の仲値からいくら離れているかを見ると、実際の負担がわかります。
Q. 中継銀行手数料はいくらかかるのか、送る前に調べられますか?
A. 正確な金額は事前にわからないのが一般的です。経由する銀行がそれぞれ手数料を決めているためで、ソニー銀行も事前に調べることはできないと案内しています。送金人負担の前払いを選んでも、差し引かれる場合があります。
Q. 円建てと外貨建て、どちらで送るほうが手数料は安くなりますか?
A. 一概には決まりません。円建てはリフティングチャージがかかり、受取国での両替レートが送金人から見えません。外貨建ては日本側の為替手数料がかかります。両方の受取額を見積もって比べるのが確実です。
Q. ニュースの為替レートで計算した金額と、送金で引き落とされた金額が合わないのはなぜですか?
A. ニュースの円相場は銀行同士の取引の相場で、個人に使われるのは銀行が決めた対顧客の相場だからです。円を外貨に替えるときはTTSが使われ、仲値に為替手数料を足した分だけ円の金額が多くなります。
制度や商品の内容は改正・改定されることがあるため、利用前に各機関の最新情報で確かめてください。










