ふるさと納税とは、自分で選んだ都道府県や市区町村に寄附をすると、寄附額のうち2,000円を超える部分が所得税と住民税から差し引かれる仕組みのことです。控除には上限があり、その範囲に収まれば実質の負担は2,000円で済みます。
上限は住民税の所得割額で決まり、特例分の控除がその2割までに収まるかどうかが基準になります。手続きはワンストップ特例か確定申告のどちらかですが、確定申告をする年は特例の申請が無効になる点に注意が必要です(令和8年4月1日現在の法令)。
目次
ふるさと納税は寄附金控除の特例で、自己負担は2,000円が基本
ふるさと納税は名前に納税と付いていますが、法律上は地方公共団体への寄附にあたります。寄附先は出身地に限られず、全国の都道府県・市区町村から自由に選べます。寄附をした人は、所得税では寄附金控除という所得控除を受け、住民税では寄附金税額控除を受けます。
住民税には、ふるさと納税だけに上乗せされる特例分という控除があります。所得税と住民税の基本分で引ききれない部分をこの特例分が埋めるため、上限の範囲内であれば自己負担が2,000円に収まります。
控除の対象になるのは、1月1日から12月31日までの1年間に行った寄附の合計です。所得税は寄附をした年の分から差し引かれ、住民税は翌年度の分、具体的には翌年6月以降に納める住民税が減ります。
控除は所得税・住民税の基本分・住民税の特例分の3つに分かれる
総務省は、ふるさと納税の控除額を3つの式で示しています。式の寄附額は、その年に行った寄附の合計額です。所得税の税率は復興特別所得税を加えた率で、課税所得に応じて5.105%から45.945%まで段階的に変わります。
| 控除の種類 | 計算式 | 上限・条件 |
|---|---|---|
| 所得税(寄附金控除) | (寄附額-2,000円)×所得税の税率 | 対象となる寄附額は総所得金額等の40%まで |
| 住民税(基本分) | (寄附額-2,000円)×10% | 対象となる寄附額は総所得金額等の30%まで |
| 住民税(特例分) | (寄附額-2,000円)×(90%-所得税の税率) | 住民税所得割額の20%まで |
出典は総務省「ふるさと納税のしくみ(税金の控除について)」です。3つの控除を足すと、税率がいくつであっても寄附額から2,000円を引いた額と同じになるように作られています。どの控除が大きくなるかは所得税の税率で変わり、税率が低い人ほど特例分の割合が大きくなります。
例えば、所得税の税率が10.21%の人が3万円を寄附したとします。所得税から約2,859円、住民税の基本分から2,800円、特例分から約2万2,341円が差し引かれ、合計は2万8,000円です。
特例分の計算に使う所得税の税率は、住民税の課税総所得金額から人的控除差調整額を引いた額で求めます。そのため所得税の計算で使う税率と一致しないことがあり、実際の控除額は上の例とずれる場合があります。
控除上限を決めるのは住民税所得割額の20%
自己負担が2,000円で済む寄附額には上限があります。所得税と基本分にも総所得金額等の40%・30%という枠がありますが、上限の計算で中心になるのは特例分の枠、住民税所得割額の20%です。
特例分の式を逆算すると、上限の目安は「住民税所得割額×20%÷(90%-所得税の税率)+2,000円」で求められます。住民税の所得割額が20万円で、所得税の税率が10.21%の人なら、4万円÷79.79%+2,000円で約5万2,000円です。
所得割額は、住民税の決定通知書(給与から天引きされる人は勤務先を通じて渡される特別徴収税額の決定通知書)で確認できます。ただし上限は寄附をした年の所得で決まるので、前年の所得で計算された通知書の金額は目安にとどまります。
年収や家族構成によって所得割額は変わるため、総務省も具体的な上限は住んでいる市区町村に問い合わせるよう案内しています。転職や副業で今年の所得が前年と大きく違う人は、余裕を持たせた金額で寄附するほうが無難です。
上限を超えて寄附したときに増える自己負担
控除上限は、寄附できる金額の上限を意味するものではありません。超えた分も寄附として受け付けられますが、特例分が所得割額の20%で頭打ちになるため、上限を超えた部分はほとんど控除されず、そのまま自己負担に加わります。
先ほどの例と同じ、住民税の所得割額が20万円・所得税の税率が10.21%の人で、寄附額ごとの控除を計算した結果は下の表のようになります。
| 寄附額 | 所得税の控除 | 住民税の基本分 | 住民税の特例分 | 控除の合計 | 自己負担 |
|---|---|---|---|---|---|
| 3万円 | 約2,859円 | 2,800円 | 約2万2,341円 | 2万8,000円 | 2,000円 |
| 5万2,000円 | 約5,105円 | 5,000円 | 約3万9,895円 | 5万円 | 2,000円 |
| 8万円 | 約7,964円 | 7,800円 | 4万円(上限) | 約5万5,764円 | 約2万4,236円 |
※仮定の条件で当サイトが総務省の計算式に当てはめた例です。実際の控除額は所得控除の内容や端数処理によって変わります。
8万円を寄附した場合、上限の目安を2万8,000円ほど超えただけで、自己負担は2,000円から約2万4,000円に増えます。超えた分の税金がわずかしか戻らないのは、所得税と基本分の控除しか働かなくなるためです。
手続きはワンストップ特例か確定申告のどちらかを選ぶ
控除を受けるには、原則として寄附をした年分の確定申告が必要です。確定申告をしなくてよい給与所得者などは、寄附先が5団体以内であれば、寄附先の自治体に申請書を出すだけで済むワンストップ特例を使えます。同じ自治体に何回寄附しても1団体と数えます。
| 項目 | ワンストップ特例 | 確定申告 |
|---|---|---|
| 使える人 | 確定申告が不要な給与所得者などで、1年間の寄附先が5団体以内 | 誰でも使える(自営業者、寄附先が6団体以上の人、医療費控除などで申告する人を含む) |
| 提出先 | 寄附先の各自治体 | 住所地の所轄税務署 |
| 期限 | 寄附をした翌年の1月10日(必着) | 翌年3月15日(2026年分は2027年3月15日)。還付を受けるだけの申告は翌年1月1日から5年間 |
| 控除のされ方 | 所得税からの控除はなく、その分も含めて翌年度の住民税が減る | 所得税は還付または納税額の減少、住民税は翌年度分が減る |
| 主な書類 | 寄附先ごとの申請書 | 寄附金受領証明書、または特定事業者が発行する寄附金控除に関する証明書 |
どちらを選んでも、上限の範囲内なら控除される合計額は変わりません。確定申告では、寄附金受領証明書のデータをマイナポータル連携で取り込み、申告書へ自動入力することもできます。寄附先が6団体以上になった年はワンストップ特例の対象外となるため、確定申告で控除を受けます。
確定申告をする年はワンストップ特例の申請が無効になる
注意が必要なのは、ワンストップ特例を申請した年に確定申告もするケースです。国税庁は、確定申告を行う人はワンストップ特例の申請が無効になるため、申請した分も含めて寄附金控除額を計算するよう案内しています。
典型的なのは、住宅ローン控除を受ける最初の年や医療費控除を受ける年、副業の所得が20万円を超えて確定申告が必要になる年です。こうした年は、ワンストップ特例を申請した寄附先も含めて、すべての受領証明書をそろえて申告書に記載してください。
寄附金控除を記載しないまま申告してしまった場合も、更正の請求をすれば控除を受けられます。申告書を出した後で気づいたときは、所轄の税務署で手続きを進めます。ワンストップ特例の申請書を出してあっても、確定申告をした年はその申請が控除につながりません。
返礼品のルールと、受け取ったときの税金
返礼品の中身は、総務大臣の指定を受けた自治体が守る基準で決まっています。調達費用は寄附額の3割以下で、個々の返礼品ごとにこの基準を満たす必要があります。品物やサービスは、その区域内で生産・提供されたものなど地場産品の基準に合うものに限られます。
2025年10月1日以後に始まる指定対象期間からは、ポイントを付与する事業者を通じた募集が、自治体の指定取消しの対象になり得るものとして扱われています。仲介サイト経由で寄附額に応じたポイントがもらえる形の募集は、この基準に触れるおそれがあります。
返礼品を受け取って得た経済的な利益は、所得税では一時所得にあたります。一時所得には最高50万円の特別控除があるため、その年にほかの一時所得がなく、返礼品の価値の合計が50万円以下なら税金はかかりません。
懸賞の賞金や生命保険の一時金などと合計して特別控除を超える年は、超えた部分の2分の1が給与などの所得と合算されて課税されます。高額の寄附を重ねた年は、返礼品の価値もあわせて把握しておく必要があります。
2026年以降に始まる制度の変更
2026年3月31日に公布された地方税法等の改正法で、住民税の特例分に金額の上限が加わりました。これまでの所得割額の20%に加え、道府県民税77万2,000円・市町村民税115万8,000円(合計193万円)のいずれか低い額までとなります。
この上限は2028年度(令和10年度)以後の住民税から適用されるため、2027年中の寄附が最初の対象です。指定都市に住む人は道府県民税と市町村民税の配分が異なりますが、合計額は同じ193万円です。
総務省の資料では、この上限に届くのは給与収入1億円程度の人とされています。それ以外の人は従来どおり所得割額の20%で上限が決まるので、ここまで説明した計算方法はそのまま使えます。
自治体の側では、2026年10月1日からの指定対象期間に、寄附金のうち地域で活用できる額の割合を52.5%以上とする基準が始まりました。この割合は1年ごとに2.5%ずつ引き上げられ、2029年10月以降の期間は60%以上となり、自治体には寄附金の使い道の公表も求められます。
よくある質問(ふるさと納税の控除と手続き)
Q. ワンストップ特例の申請書が1月10日に間に合わなかったら、控除は受けられませんか?
A. ワンストップ特例は使えませんが、確定申告をすれば寄附金控除を受けられます。税金の還付を受けるための申告は、寄附をした年の翌年1月1日から5年間提出できます。
Q. 住民税の所得割がかからない人がふるさと納税をすると、控除はどうなりますか?
A. 特例分の上限は所得割額の20%なので、所得割が0円なら特例分も0円です。所得税も課税されていなければ控除で減る税金がなく、寄附額のほぼ全額が負担になります。
Q. ワンストップ特例を申請した後に引っ越した場合は、何をすればよいですか?
A. 寄附をした翌年の1月10日までに、寄附先の自治体へ変更届出書を提出します。様式は「寄附金税額控除に係る申告特例申請事項変更届出書」で、オンラインで受け付ける自治体もあります。
Q. 夫婦の一方の控除上限が余っていたら、もう一方の寄附に回せますか?
A. 回せません。控除は寄附をした本人の所得税と住民税から行われ、上限もその人の所得割額で計算されます。共働きの夫婦は、それぞれの所得で上限を見積もって寄附します。
寄附の前に押さえておくこと
- 自己負担2,000円で済むのは、特例分が住民税所得割額の20%に収まる範囲まで
- 上限は寄附をした年の所得で決まり、前年の通知書の金額は目安にとどまる
- 確定申告をする年はワンストップ特例の申請が無効になり、すべての寄附を申告書に記載する
- 2027年中の寄附からは、住民税の特例分に合計193万円の上限が加わる
制度や商品の内容は改正・改定されることがあるため、利用前に各機関の最新情報で確かめてください。










