お金の教科書暮らしのお金を、基礎からやさしく
転職 約10分で読めます

転職した年の年末調整|前職の源泉徴収票が必要な理由と届かないとき

年の途中で転職した人の年末調整は、前の会社の給与と今の会社の給与を合わせて、12月に今の会社が行います。前の会社で払った給与の金額と差し引かれた税額は、前職の源泉徴収票で確認するため、この書類を年末調整の書類と一緒に今の会社へ出す必要があります。

前職の源泉徴収票が手元にないと、今の会社は年末調整ができません。その場合は翌年に自分で確定申告をして、1年分の税額を精算します。前の会社は退職後1か月以内に源泉徴収票を交付する決まりなので、届いていなければ早めに前の会社へ求めてください。

転職した年の年末調整は、今の会社が前職の給与も合わせて行う

年末調整とは、毎月の給与から概算で差し引いた所得税と、1年分の給与にかかる本来の税額との差を、12月に勤め先が精算する手続きのことです。国税庁によると、年の途中で就職し年末まで勤めている人も、1年を通じて勤めている人と同じく対象になります。

前の会社に「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を出して受け取っていた給与があれば、その給与も含めて年末調整をします。毎月の税額を源泉徴収税額表の甲欄で計算されていた勤め先が、これに当たります。

前の会社は、辞めた人の年末調整をしません。12月分の給与を受け取った後に辞めた場合などを除き、年の途中で退職した人は年末調整の対象外だからです。前の会社の分は前の会社で精算が済んでいる、と考えるのは誤りです。

その年の働き方 年末調整をする会社 前職の源泉徴収票
同じ会社に1年勤めた その会社 不要
年の途中で転職し、12月も新しい会社に勤めている 新しい会社(前職分も合算) 新しい会社へ提出する
3月に学校を卒業し、4月に初めて就職した 就職した会社 前職がないので不要
年の途中で辞め、年内に再就職しなかった どこもしない 翌年の確定申告で使う

出典:国税庁 No.2674 中途就職者の年末調整、同 No.2665 年末調整の対象となる人、同 No.1910 中途退職で年末調整を受けていないとき(2026年11月2日確認)

年の途中で入社すると基礎控除や扶養控除が月数で減る、と思われがちですが、そうはなりません。国税庁は4月に就職した人の例を挙げ、所得のあった月数で割り振らずに控除の全額が認められると説明しています。

前職の源泉徴収票が必要なのは、税率が1年分の合計で決まるから

所得税は、所得が増えるほど高い税率がかかる仕組みです。課税される所得のうち195万円未満の部分は5%ですが、195万円以上の部分には10%、330万円以上の部分には20%と上がっていきます。前の会社と今の会社の給与を別々に計算すると、どちらも低い税率で済んでしまい、1年分の正しい税額になりません。

基礎控除も、1年分の所得に対して1回しか使えません。会社ごとに計算すると、それぞれで基礎控除を引いてしまうため、税額はさらに少なく出ます。前職の源泉徴収票には、前の会社が払った給与、差し引いた所得税、社会保険料の金額が書かれていて、今の会社はこれを自社の金額に足して計算します。

当サイト試算 別々に計算した税額と合算した税額

1年分の税額がどれだけ変わるかを、2026年分のルールで計算しました。給与だけの単身者で扶養家族はなく、社会保険料は給与の15%、ほかの控除はないと仮定した説明のための仮の例です。

給与(2026年分) 会社ごとに計算した税額の合計 合算した正しい年税額 差額
前職180万円+今の会社210万円(合計390万円) 200円 53,800円 53,600円
前職300万円+今の会社300万円(合計600万円) 54,000円 147,500円 93,500円

当サイト試算(2026年11月2日)。税額は所得税と復興特別所得税の合計(100円未満切り捨て)。給与所得控除は国税庁 No.1410の令和8年分の算式、基礎控除はNo.1199、税率はNo.2260の速算表、計算の順序はNo.2662による。実際の年末調整では所得税法の別表第五で給与所得を求めるため、千円単位の差が出ることがあります。

合計390万円の例では、給与所得268万円から社会保険料58.5万円と基礎控除104万円を引いた105.5万円に5%がかかり、年税額は53,800円です。会社ごとに分けると、どちらも所得がほぼ基礎控除の範囲に収まり、税額は合わせて200円にしかなりません。

合計600万円の例では、合算すると課税される所得が242万円になり、10%の税率がかかる部分が出てきます。会社ごとに計算した54,000円との差は93,500円で、給与が多い人ほど合算しないことによる差が大きくなります。

この差額は、前職の源泉徴収票を出さずに済ませても消えません。年末調整がされなかった給与がある人は、翌年に確定申告をして不足分を払うか、差し引かれすぎた分の還付を受けることになります。

2026年分は12月の年末調整で基礎控除が最大104万円に上がる

令和8年度の税制改正で、所得税の基礎控除と給与所得控除の最低額が引き上げられました。2026年12月1日に施行され、2026年分(令和8年分)の所得税から適用されます。合計所得金額が489万円以下の人の基礎控除は104万円になり、給与所得控除の最低額は74万円になりました。

合計所得金額 2025年分の基礎控除 2026年分の基礎控除
132万円以下 95万円 104万円
132万円超336万円以下 88万円 104万円
336万円超489万円以下 68万円 104万円
489万円超655万円以下 63万円 67万円
655万円超2,350万円以下 58万円 62万円

出典:国税庁 No.1199 基礎控除、同「令和8年度税制改正による所得税の基礎控除の引上げ等について」(2026年11月2日確認)。2027年分は2026年分と同じ金額で、2028年分以後は132万円以下が99万円、132万円超2,350万円以下が62万円になる。

2026年11月までの毎月の源泉徴収は改正前のままで、引上げ分は12月の年末調整でまとめて精算されます。前の会社で差し引かれた所得税も改正前の基準で計算されているため、前職分を合算して年末調整を受ければ、この引上げも1年分の給与に反映されます。

上の試算の合計390万円の例を2025年分のルールで計算すると、年税額は62,000円でした。2026年分の53,800円との差8,200円は、基礎控除が88万円から104万円に上がった分です。合計600万円の例では184,200円から147,500円へ、36,700円少なくなります。

合算する給与と、合算しない給与

合算の対象は、前の会社に扶養控除等申告書を出して受け取った給与です。同じ年に2社以上を辞めて移ってきた人は、それぞれの会社の源泉徴収票が必要です。

扶養控除等申告書を出していない勤め先からの給与は、年末調整に含めません。掛け持ちのアルバイトなどで、源泉徴収税額表の乙欄で税金を差し引かれていた給与がこれに当たります。年末調整されなかった給与の収入と、給与以外の所得の合計が20万円を超える人は、確定申告が必要です。

前職の源泉徴収票は、退職後1か月以内に交付される決まり

源泉徴収票とは、その年に会社が払った給与の金額と、給与から差し引いた所得税や社会保険料の額を記載した書類のことです。所得税法で、会社は給与を払ったすべての人に交付しなければならないと定められています。

交付の期限は、年の途中で辞めた人には退職の日から1か月以内です。在職している人には翌年1月31日までに交付されます。退職の手続きで前の会社に郵送先を伝えておき、最後の給与の支払いが済んだころに届くかどうかを確認してください。

書面の代わりに電子データで受け取ることもできます。会社が事前に本人の承諾を得るなどの条件を満たせば電子交付ができ、その場合でも本人が求めれば書面で交付しなければなりません。今の会社が紙での提出を求めるときは、前の会社に書面での交付を頼めます。

届かないときは、前の会社に求めてから税務署に届け出る

退職から1か月を過ぎても届かないときは、まず前の会社に交付を求めます。事務の手続き中で遅れていることもあるため、いつ届くかを問い合わせるだけで解決する場合もあります。

求めても交付されないときは、税務署に「源泉徴収票不交付の届出書」を出せます。提出できるのは交付の期限を過ぎてからで、e-Taxのほか、書面で持参や郵送もできます。届出を受けた税務署は、前の会社に源泉徴収票を交付するよう行政指導を行います。

届出書には、手元にあれば給与明細の写しと、前の会社に交付を求めたことが分かる書類を添えます。国税庁は、交付を求めた日時、場所、相手、方法、やりとりの内容をメモに残すよう案内しています。

  • 行政指導に法律上の拘束力はなく、届出の後も自分で前の会社に交付を求め続ける必要がある
  • 一度受け取った源泉徴収票をなくしたときの再発行は、この届出の対象外で、前の会社に直接頼む
  • 業務委託の報酬など、雇用契約に基づく給与でなければ給与の源泉徴収票は発行されない

年末調整に間に合わなかったら、翌年に確定申告をする

前職の源泉徴収票が年末調整までにそろわないと、今の会社は年末調整を行えません。国税庁の質疑応答事例でも、前職分の給与の金額が確認できない中途就職者は年末調整ができないとされています。その場合は、前職分と今の会社の分の源泉徴収票をそろえて、自分で確定申告をします。

確定申告の期間は、原則として翌年2月16日から3月15日までで、2026年分なら2027年2月16日からです。差し引かれすぎた税金が戻る還付申告は、翌年1月1日から5年間できます。前職の源泉徴収票が年明けに届いた場合も、そこから申告すれば間に合います。

確定申告では1年分の給与を合わせて税額を計算し直すため、前職分を合算しなかったことによる過不足はここで精算されます。会社員が確定申告をする必要があるのはどんなときかは、確定申告が必要な会社員の条件の記事で紹介しています。

今の会社に出す書類と、そろえる時期

転職した年の年末調整で今の会社に出す書類は、毎年勤めている人とほぼ同じです。違うのは前職の源泉徴収票と、退職から入社までの間に自分で払った保険料の証明書が加わる点で、年末調整の書類を配られた時点でそろっているかを見直してください。

書類 どんな人が出すか 手に入れる先
扶養控除等(異動)申告書 全員(入社時に提出済みのことが多い) 今の会社
基礎控除申告書(配偶者控除等の申告書と一体の様式) 全員 今の会社
前職の給与所得の源泉徴収票 その年に前の会社で給与を受け取った人 前の会社
保険料控除申告書と国民年金保険料の控除証明書 退職から入社までの間に国民年金保険料を払った人 保険料の支払いを証明する書類
生命保険料・地震保険料の控除証明書 保険に入っている人 保険会社

出典:国税庁 No.2668 年末調整の対象となる給与、同 No.1130 社会保険料控除(2026年11月2日確認)

退職から入社までの間に払った国民年金や国民健康保険の保険料は、全額が社会保険料控除の対象です。国民年金保険料を年末調整で申告するには、支払額を証明する書類の添付か提示が必要です。退職後の国民年金の届出と保険料は退職後の国民年金の手続きをご覧ください。

生命保険料控除や地震保険料控除のように年末調整で受けられる控除と、医療費控除のように確定申告が必要な控除の違いは、年末調整でできる控除・できない控除の記事で解説しています。

制度や税額の計算方法は改正されることがあるため、年末調整の書類を出す前に国税庁の最新情報で確かめてください。

参考・出典

国税庁 No.2674 中途就職者の年末調整/同 No.2668 年末調整の対象となる給与/同 No.7411「給与所得の源泉徴収票」の提出範囲と提出枚数等/同 F5-4 源泉徴収票不交付の届出手続/同 質疑応答事例「前の給与の支払者が支払った給与等の金額が分からないときの提出範囲」/同 No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人/同 No.2020 確定申告(いずれも2026年11月2日確認)

転職の記事をもっと読む

転職の記事一覧へ