自己都合退職と会社都合退職の違いは、失業保険(雇用保険の基本手当)を受け取り始める時期と、受け取れる日数に表れます。正当な理由のない自己都合で辞めた人には原則1か月の給付制限があり、給付日数も90日〜150日です。
倒産や解雇などの会社都合で辞めた人は給付制限がなく、年齢と加入年数によっては最大330日まで受け取れます。どちらに当たるかは、退職届の文言ではなくハローワークが離職の事実をもとに判定します。
たとえば42歳・加入12年・月給30万円の人なら、自己都合は120日分で約75.7万円、会社都合は240日分で約151.4万円です(2026年10月時点の制度による当サイト試算)。
会社都合退職は、雇用保険では特定受給資格者と呼ばれる
雇用保険では、倒産や解雇など再就職の準備をする時間がないまま離職した人を特定受給資格者といいます。一般に会社都合退職と呼ばれているのは、この特定受給資格者のことです。
自己都合で辞めた人のうち、病気や家族の介護、契約が更新されなかったなど、やむを得ない理由がある人は特定理由離職者に当たります。どちらにも当たらない自己都合や定年などの離職は、一般の離職者として扱われます。
失業保険の基本的な仕組みや1日あたりの金額の計算方法は、失業保険(基本手当)のもらえる条件と金額の計算の記事で解説しています。
3つの区分で変わる4つの条件
離職理由の区分によって、受給資格に必要な加入期間、給付制限の有無、所定給付日数、国民健康保険料の軽減の4つが変わります。2026年10月時点の取り扱いをまとめると、下の表のようになります。
| 項目 | 特定受給資格者(会社都合) | 特定理由離職者 | 一般の離職者(自己都合など) |
|---|---|---|---|
| 必要な加入期間 | 離職前1年間に6か月以上 | 離職前1年間に6か月以上 | 離職前2年間に12か月以上 |
| 給付制限 | なし | なし | 正当な理由のない自己都合は原則1か月 |
| 所定給付日数 | 90日〜330日(年齢と加入年数で決まる) | 契約が更新されなかった人は会社都合と同じ(2027年3月31日までの離職)、それ以外は一般と同じ | 90日〜150日(加入年数だけで決まる) |
| 国民健康保険料の軽減 | 対象 | 対象 | 対象外 |
※給付日数は就職困難者を除く。出典はハローワークインターネットサービス「基本手当の所定給付日数」ほか(2026年10月確認)。
加入期間の条件が緩いため、入社して1年たたずに会社都合で離職した人でも、6か月以上加入していれば受給できます。同じ期間で自己都合退職をした場合は、前の会社の加入期間を通算しても12か月に届かなければ受給できません。
給付制限は待期7日間の後に原則1か月、3か月になる場合もある
給付制限とは、正当な理由のない自己都合退職や本人の重大な責任による解雇の場合に、待期の7日間が終わってからも一定期間基本手当が支給されない仕組みのことです。2025年4月1日以降に離職した人は、自己都合の給付制限が原則1か月になりました。
ただし、退職日からさかのぼって5年間に、正当な理由のない自己都合退職で2回以上受給資格の決定を受けている人は、3か月になります。自分の重大な責任で解雇(重責解雇)された場合も3か月です。転職を短い間隔で繰り返している人は、次の退職が3回目に当たらないか数えておきましょう。
ハローワークインターネットサービスの手続き案内のページには、2026年10月時点でも改正前の2か月という記載が残っています。各地の労働局の案内は、2025年4月1日以降の離職を原則1か月、それ以前の離職を原則2か月と区別しています。
2025年4月以降に教育訓練給付の対象講座や公共職業訓練などを受けた人は、受講の時期などの条件を満たせば給付制限が解除されます。自己都合で辞めた後に資格の勉強を始める予定があるなら、受講を始める前にハローワークで対象になるか相談してください。
同じ人でも受給総額は最大120万円ほど変わる(当サイト試算)
給付日数の差が金額でどれくらいになるかを、年齢と勤続年数が異なる3つの例で計算しました。給与は6か月同じ額だったと仮定し、2026年8月1日以降の計算式で基本手当日額を出しています。
| 説明のための仮の例 | 基本手当日額 | 自己都合(一般) | 会社都合(特定受給資格者) | 差額 |
|---|---|---|---|---|
| 28歳・加入6年・月給22万円 | 5,357円 | 90日・約48.2万円 | 120日・約64.3万円 | 約16.1万円 |
| 42歳・加入12年・月給30万円 | 6,307円 | 120日・約75.7万円 | 240日・約151.4万円 | 約75.7万円 |
| 52歳・加入25年・月給40万円 | 6,744円 | 150日・約101.2万円 | 330日・約222.6万円 | 約121.4万円 |
※月給は残業代などを含む額面。賃金日額=月給×6÷180。所定給付日数をすべて受け取った場合の当サイトの概算。計算式は厚生労働省の資料にある計算例(賃金日額6,000円で4,683円、9,000円で6,013円)と同じ結果になります。実際の金額は雇用保険受給資格者証で確認できます。

年齢と加入年数が上がるほど、会社都合の日数だけが大きく伸びます。52歳の例では、自己都合なら150日で受給が終わりますが、会社都合なら330日と2倍以上になります。一方で28歳の例では差は30日分で、約16万円にとどまります。
受け取り始める時期にも差があります。会社都合の人は手続きから約1か月後の最初の認定日の数日後に入金がありますが、自己都合の人は給付制限の1か月が加わります。退職から最初の入金まで2か月前後かかる前提で、生活費を用意しておきましょう。
住宅ローンを返済中で収入の空白が心配な人は、住宅ローンの返済が苦しいときの返済方法の変更と相談先も参考になります。
自己都合で辞めても会社都合と同じ扱いになるケース
自分から退職を申し出た場合でも、その原因が会社側にあれば特定受給資格者になることがあります。ハローワークが示している範囲のうち、在職中の人に関わりやすいものは次のとおりです。
- 離職前6か月のうち、連続する3か月で月45時間、またはどれか1か月で100時間を超える時間外労働があった(連続する2か月以上の平均で月80時間を超えた場合も含む)
- 賃金の3分の1を超える額が支払期日までに払われなかった
- 予見できないまま、賃金がそれまでの85%未満に下がった
- 採用時に示された労働条件と実際の条件が大きく違った
- 上司や同僚から故意の排斥や著しい冷遇、嫌がらせを受けた
- 会社から退職を勧められた(常設の早期退職優遇制度への応募は除く)
- 事業所が移転し、通勤が難しくなった
長時間労働や賃金の未払いで辞める人は、タイムカードの写しや給与明細を退職前に手元へ残しておくと、後で事実を示しやすくなります。
契約社員の雇止めは、更新回数と本人の希望で扱いが分かれる
期間の定めのある契約で働く人は、契約が更新されずに終わった理由で区分が変わります。更新を繰り返して3年以上働いた人が更新されなかった場合と、契約時に更新すると明示されていたのに更新されなかった場合は、特定受給資格者です。
それ以外で、本人が更新を希望したのに合意できず契約が終わった人は、特定理由離職者になります。この場合は、離職日が2027年3月31日までなら所定給付日数が特定受給資格者と同じになる特例があります。
契約書に「更新する場合がある」と書かれていた人は当てはまりますが、更新しないと明記されていた人は対象外です。
病気・介護・転居による退職は特定理由離職者
病気やけがで働き続けられなくなった人、親の介護など家庭の事情が急に変わった人は、特定理由離職者に当たります。結婚に伴う転居や配偶者の転勤で通勤できなくなった人も同じです。給付制限はかかりませんが、契約の雇止め以外の特定理由離職者は、給付日数が一般の離職者と同じ90日〜150日になります。
離職理由は、ハローワークが資料で事実を確かめて判断する
退職届に一身上の都合と書いて出したからといって、自己都合退職に決まるわけではありません。厚生労働省が離職者向けに出している案内では、事業主と離職者の双方の主張を聞き、それぞれを裏づける資料で事実を確認したうえで、ハローワークが離職理由を判断するとしています。
会社から届く離職票-2には、事業主が記入した離職理由の欄があり、その横に離職者が記入する欄があります。会社の記載に異議がなければ同じ理由にチェックを入れ、異議があれば自分の主張に当たる理由にチェックを入れて、離職に至った経緯を具体的に書きます。
主張を裏づける資料として、厚生労働省の案内は次のようなものを例に挙げています。
- 解雇の場合は解雇予告通知書や退職証明書、就業規則
- 退職を勧められた場合や希望退職に応じた場合は、募集要綱や応募したことが分かる資料
- 契約期間の満了は、雇入通知書や労働契約書、契約更新の通知書
- 賃金が下がった場合は、給与明細書や通知書、タイムカードの写し
実際は退職を勧められたのに自己都合と書かれていた場合は、受給手続きのときにハローワークへ相談してください。会社との話し合いで解決しない労働条件の問題は、各地の労働局にある総合労働相談コーナーでも相談できます。反対に、事実と違う理由を申告すると不正受給として返還などの対象になります。
会社都合なら国民健康保険料も軽くなる
特定受給資格者と特定理由離職者は、退職後に国民健康保険に入る場合、保険料(税)の軽減を受けられます。前年の給与所得を100分の30として保険料を計算する制度で、失業した時から翌年度末までが対象です。自己都合の一般の離職者は対象になりません。
軽減は自動では適用されず、住んでいる市区町村の国民健康保険の窓口に申請します。必要な書類は市区町村ごとに異なるため、ハローワークで受給資格が決まったら、窓口に問い合わせて手続きをしましょう。
退職前にできることは、辞める理由が会社側の事情によるものかを整理し、それを示す書類を残しておくことです。雇用保険の制度は改正されることがあるため、退職の前に住所地のハローワークで最新の取り扱いを確かめてください。
参考・出典:ハローワークインターネットサービス「特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲の概要」/同「基本手当の所定給付日数」/群馬労働局・ハローワーク「給付制限期間が原則1か月となります」/厚生労働省「雇用保険の基本手当日額の変更」(2026年7月31日)/厚生労働省「離職された方へ 離職票-2の離職理由欄等の記載方法について」/厚生労働省「国民健康保険の保険料・保険税について」(いずれも2026年10月確認)


