失業保険とは、雇用保険に入っていた人が会社を辞めたあと、次の仕事を探す間に受け取れる給付のことです。正式には雇用保険の基本手当といい、離職前2年間に加入期間が12か月以上あれば対象になります。1日あたりの金額は離職前6か月の賃金のおおむね50〜80%で、2026年8月1日からの上限は年齢により7,450円〜9,110円です。
受け取れる日数は90日〜360日で、退職の理由と年齢、加入していた年数で決まります。自己都合で辞めた場合は、2025年4月1日以降の離職なら給付制限が原則1か月に短くなりました。条件・金額・日数・手続きの順に、ハローワークと厚生労働省の公表資料(2026年10月確認)をもとに解説します。
失業保険は雇用保険の「基本手当」のこと
雇用保険から出る給付にはいくつかの種類があり、仕事を辞めた人が受け取るものを求職者給付といいます。そのうち65歳未満の人が受け取る中心の給付が基本手当で、一般に失業保険と呼ばれているのはこの基本手当です。
基本手当の目的は、失業中の生活を支えながら再就職の活動をしてもらうことにあります。そのため、退職したら自動的に振り込まれるわけではありません。ハローワークで求職の申込みをして、仕事を探している状態であると認定を受けた日数分だけ支給されます。
65歳以上で離職した人には、基本手当ではなく一時金の高年齢求職者給付金が支給されます。高年齢求職者給付金は一括で支給され、受け取る条件も基本手当とは異なります。
受け取れる条件は加入期間と「働ける状態」の2つ
基本手当を受け取るには、まず雇用保険の加入期間の条件を満たす必要があります。原則は、離職の日以前2年間に被保険者期間が通算12か月以上あることです。倒産・解雇などで離職した特定受給資格者と、契約の雇止めなど一定の理由で離職した特定理由離職者は、離職の日以前1年間に6か月以上あれば足ります。
被保険者期間の1か月とは、賃金の支払いの基礎になった日数が11日以上ある月のことです。11日以上の月が足りない場合は、労働時間が80時間以上ある月も1か月として数えられます。転職を何度かしている人は、前の会社の加入期間を通算できる場合があります。
もう一つの条件は、すぐに働ける状態で仕事を探していることです。病気やけが、妊娠・出産・育児などで30日以上働けない人は、その間は基本手当を受け取れません。この場合は受給期間の延長を申請すると、受け取れる期間を最大3年延ばせます。
1日あたりの金額は賃金日額に50〜80%を掛けて計算する
基本手当の1日分を基本手当日額といいます。計算のもとになるのは賃金日額で、離職前6か月に支払われた賃金の合計を180で割った金額です。残業代や通勤手当などは賃金に含まれますが、賞与(ボーナス)は含まれません。
賃金日額に掛ける給付率は、賃金が低い人ほど高くなるように決められています。離職時に60歳未満の人は80〜50%、60歳以上65歳未満の人は80〜45%です。厚生労働省の資料によると、2026年8月1日以降、60歳未満の人の給付率は次のように区切られています。
| 賃金日額(60歳未満) | 給付率 |
|---|---|
| 3,203円以上5,480円未満 | 80% |
| 5,480円以上13,490円以下 | 80%から50%へ段階的に下がる |
| 13,490円超〜年齢別の上限 | 50% |
※厚生労働省「雇用保険の基本手当日額の変更」(2026年7月31日公表)の別添資料をもとに作成。
基本手当日額には上限と下限があります。上限は毎年8月1日に見直され、2026年は令和7年度の平均給与額が前年度より約2.7%上がったことを受けて引き上げられました。
| 離職時の年齢 | 2026年7月31日まで | 2026年8月1日から |
|---|---|---|
| 30歳未満 | 7,255円 | 7,450円 |
| 30歳以上45歳未満 | 8,055円 | 8,270円 |
| 45歳以上60歳未満 | 8,870円 | 9,110円 |
| 60歳以上65歳未満 | 7,623円 | 7,830円 |
| 下限(全年齢) | 2,411円 | 2,562円 |
※基本手当日額の上限額・下限額。出典は厚生労働省の報道発表資料(2026年7月31日)。
月給別に見た基本手当日額の目安(当サイト試算)
給付率が段階的に下がる区間では、月給が上がっても日額はそれほど増えません。厚生労働省の資料にある計算例(賃金日額6,000円で4,683円、9,000円で6,013円)と同じ方法で、60歳未満の人の日額を月給別に計算しました。月給は残業代などを含む額面で、6か月同じ額だったと仮定しています。
| 月給(額面) | 賃金日額 | 基本手当日額 | 90日分の合計 |
|---|---|---|---|
| 20万円 | 6,666円 | 5,036円 | 約45.3万円 |
| 25万円 | 8,333円 | 5,775円 | 約52.0万円 |
| 30万円 | 10,000円 | 6,307円 | 約56.8万円 |
| 40万円 | 13,333円 | 6,744円 | 約60.7万円 |
※2026年8月1日以降の給付率で当サイトが計算した概算。実際の金額はハローワークが交付する雇用保険受給資格者証で確認できます。

月給20万円の人は賃金日額の約75%を受け取れますが、月給40万円の人は約51%にとどまります。月給が2倍になっても日額は1.3倍ほどにしかならないため、収入が高かった人ほど失業中の生活費との差が大きくなります。退職前に、受給できる額で何か月暮らせるかを計算しておきましょう。
何日分もらえるかは退職理由・年齢・加入年数で決まる
基本手当を受け取れる日数の上限を所定給付日数といいます。自己都合や定年で辞めた一般の離職者は、年齢に関係なく加入年数だけで決まり、90日〜150日です。
| 被保険者であった期間 | 一般の離職者(全年齢) |
|---|---|
| 10年未満 | 90日 |
| 10年以上20年未満 | 120日 |
| 20年以上 | 150日 |
倒産や解雇などで離職した特定受給資格者は、再就職の準備をする時間がなかったことから、年齢と加入年数に応じて日数が多く設定されています。加入期間が1年未満の場合は、どの年齢でも90日です。
| 離職時の年齢 | 1年以上5年未満 | 5年以上10年未満 | 10年以上20年未満 | 20年以上 |
|---|---|---|---|---|
| 30歳未満 | 90日 | 120日 | 180日 | - |
| 30歳以上35歳未満 | 120日 | 180日 | 210日 | 240日 |
| 35歳以上45歳未満 | 150日 | 180日 | 240日 | 270日 |
| 45歳以上60歳未満 | 180日 | 240日 | 270日 | 330日 |
| 60歳以上65歳未満 | 150日 | 180日 | 210日 | 240日 |
※特定受給資格者と一部の特定理由離職者の所定給付日数。出典はハローワークインターネットサービス「基本手当の所定給付日数」(2026年10月確認)。
障害のある人など就職が難しい人(就職困難者)は、加入1年以上なら45歳未満で300日、45歳以上65歳未満で360日です。同じ勤続15年の45歳でも、自己都合なら120日、会社都合なら270日と2倍以上の差が出ます。
会社都合と判断される主なケース
特定受給資格者にあたるかどうかは、会社が離職票に書いた理由だけでなく、ハローワークが事実を調べて判断します。ハローワークが示している主な例は次のとおりです。
- 倒産、事業所の廃止や移転で通勤が難しくなった
- 解雇された(本人の重大な責任による解雇を除く)
- 賃金の一定額以上が期日までに支払われなかった、または予見できずに賃金が85%未満に下がった
- 離職直前6か月のうち、連続する3か月で月45時間を超える時間外労働があった
- 上司や同僚からの嫌がらせを受けた、会社から退職を勧められた
自己都合でも、病気やけが、家族の介護、結婚や転勤に伴う通勤困難など正当な理由がある場合は特定理由離職者になり、給付制限を受けません。実際は退職を勧められたのに自己都合とされているなど、離職理由に異議があるときは、手続きの際にハローワークへ相談してください。
自己都合の給付制限は2025年4月から原則1か月に短縮
正当な理由のない自己都合で辞めた人は、待期の7日間が終わってからさらに一定期間、基本手当を受け取れません。この期間を給付制限といいます。離職日が2025年4月1日以降であれば、給付制限は原則1か月です。2025年3月31日以前に辞めた人は、改正前の原則2か月が適用されます。
「自己都合だと2か月もらえない」という説明は、改正前のルールです。ただし、離職日からさかのぼって5年間に、正当な理由のない自己都合離職で2回以上受給資格の決定を受けている場合は3か月になります。自分の重大な責任で懲戒解雇された場合も3か月です。
同じ改正で、教育訓練を受けた人の給付制限が解除される仕組みもできました。対象は、2025年4月1日以降に受講を始めた教育訓練給付金の対象講座や公共職業訓練などです。離職日前1年以内に受講した人と、離職後に受講している人が当てはまり、途中で退校した場合は対象外になります。
申請から最初の振込までの流れ
手続きは、住所を管轄するハローワークで行います。必要なのは、会社から届く離職票(雇用保険被保険者離職票-1、-2)、マイナンバーカード(ない場合は個人番号と身元を確認できる書類)、本人名義の通帳かキャッシュカード、写真2枚です。マイナンバーカードを毎回提示する人は写真を省略できます。
- ハローワークで求職の申込みをし、離職票を提出する
- 受給資格が決まり、離職理由が判定される
- 求職の申込みから7日間は待期で、支給されない
- 雇用保険受給者初回説明会に出席し、最初の失業認定日を知らされる
- 原則4週間に1度の失業認定日に、求職活動の実績を申告する
- 認定日から通常5営業日で、指定の口座に振り込まれる
失業の認定を受けるには、認定の対象期間ごとに原則2回以上の求職活動の実績が必要です。最初の認定日の対象期間だけは1回で認められます。求人への応募や、ハローワークでの職業相談・セミナーの受講は実績になりますが、求人情報を閲覧しただけでは実績になりません。
給付制限のない会社都合の人は、手続きから約1か月後の最初の認定日のあと、数日で初回の振込があります。自己都合の人は待期と給付制限の1か月が過ぎてからの認定になるため、退職から最初の入金まで2か月前後みておくと、生活費の計画が立てやすくなります。
受給中に知っておきたい5つのルール
受給期間は離職の翌日から原則1年
基本手当を受け取れる期間(受給期間)は、離職の日の翌日から原則1年です。所定給付日数が残っていても、1年を過ぎた分は支給されません。退職後しばらく休んでから手続きをすると、給付制限と合わせて日数を使い切れないことがあるため、離職票が届いたら早めにハローワークへ行きましょう。
アルバイトの収入は認定日に申告する
受給中にアルバイトや内職をしたときは、働いた日と収入額を失業認定申告書で必ず申告します。働いた日の分は支給されず、内職などで収入を得た日は収入に応じて減額されることがあります。2026年8月1日以降、減額の計算で収入の1日分から差し引く控除額は1,429円です。申告しなかった場合は不正受給として厳しい処分の対象になります。
基本手当に所得税・住民税はかからない
雇用保険法第12条により、失業等給付として受け取ったお金には税金などの公課を課すことができません。そのため基本手当は所得税・住民税の対象外で、確定申告の収入にも含めません。退職した年に確定申告が必要になる条件は、確定申告が必要な会社員の条件と20万円ルールの記事で紹介しています。
65歳未満の人は老齢厚生年金と同時に受け取れない
65歳未満で特別支給の老齢厚生年金を受け取れる人が、基本手当のために求職の申込みをすると、受給が終わるまで年金は全額支給停止になります。どちらが多いかは人によって違うため、年金事務所で年金額を確かめてから手続きをしてください。
会社都合なら国民健康保険料が軽くなる
特定受給資格者・特定理由離職者として基本手当を受ける人は、国民健康保険料(税)の軽減を受けられます。届け出をしないと適用されないため、住んでいる市区町村の国民健康保険の窓口で申請しましょう。退職後に住宅ローンの返済が難しくなりそうな場合は、住宅ローンの返済が苦しいときの返済方法の変更と相談先も参考になります。
2028年10月からは週10時間以上で働く人も対象に
雇用保険に加入する条件は、現在は週の所定労働時間が20時間以上であることです。2024年に成立した改正法により、2028年10月1日からは週10時間以上に引き下げられます。施行後は、パートやアルバイトで週10時間以上20時間未満の人も加入し、条件を満たせば基本手当を受け取れるようになります。
基本手当の上限額・下限額は毎年8月1日に見直されるため、退職の時期によって受け取れる額は変わります。制度や商品の内容は改正・改定されることがあるため、手続きの前にハローワークと厚生労働省の最新情報で確かめてください。
参考・出典:ハローワークインターネットサービス「基本手当について」/同「雇用保険の具体的な手続き」/同「特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲の概要」/厚生労働省「雇用保険法等の一部を改正する法律等の概要」/e-Gov法令検索 雇用保険法(いずれも2026年10月確認)
